達人コラム
2020.10.06
ミレニアル世代と呼ばれる20代、30代は、共働きファミリーが多数派。もっと家事をラクに楽しくこなしたい!と、切実に願う人は多いようです。家事の効率化に役立つメソッド「知的家事」を提唱している本間朝子さんに、ミレニアル世代の家事意識と時短家事を成功させる秘訣をうかがいました。
時短家事セミナーに参加される20代、30代の女性を見ていると、「家事シェアは当たり前」という人もいれば、「夫がやってくれなくて…」と悩んでいる人、ほぼ家電まかせの人、おばあちゃんの知恵袋みたいなアイデアが好きな人…など、実にさまざまです。
ただ、家事アイデアを交換するワークショップをおこなうと、家事をしやすくするために動線や整理収納を工夫する“環境整備”を実践している人が増えている印象があります。
3年前にワーキングマザーが7割を越えたというニュースが出ましたが、その頃から急速に時短家事が浸透してきて、知恵を得るだけでなく、家そのものを時短家事できるように改良する人が増えました。くらしの現場レポート「家事の効率化でくらしを充実 ミレニアル世代の家事をまわすしくみ作り」に登場した方々も、いくつもの家の整備による時短家事アイデアを実践されていましたね。
環境整備を実践する人が増えているということは、おしゃれなインテリアへの憧れもあるとは思いますが、「家事の負担を軽くしたい」という願いがそれだけ切実なのだと思います。なぜなら、時短家事スキルの中でも、環境整備は効果が大きい反面、家事スペースを見直したり、物を整理したりする必要があるので、時間や手間がかかるからです。
私は以前から、「時短家事7つの法則」を提案していますが、その中の“小技”や“便利グッズ”というのは手軽に実践できる反面、効果はそれほど大きくないのが特徴です。それに比べて、“環境整備”や“便利家電”の導入、“家事代行”の利用は、取り入れるのに手間や費用がかかる反面、時短の効果が大きくなります。
家事をシェアすることも、時短家事スキルの一つです。
しかも、費用をかけずに家事の負担が軽減できるので、うまく取り入れられると効果は絶大です。その際、ポイントとなるのは、家族をうまく巻き込む工夫です。その点、20代、30代は、楽しみながら家事をシェアすることが上手だと思います。
例えば、土曜の午前はみんなで家事をして、終わったら美味しいものを食べに行くというスケジュールを恒例にしている人や、ごみの分別のための空き缶つぶしやペットボトルのラベルはがしを、「週末に、家族でゲームみたいにやっています」という人がいました。また、整理収納は、「自分だけが片付けやすい」のではなく、「家族みんなが片付けやすい」というコンセプトで、位置を見直すなどの工夫をしている人もいます。
家事は家族が心地よく暮らすためのものなので、家族の参加を促すためにも、家事をしたときにはお互いに「ありがとう」など感謝の言葉をかけるのがおすすめです。「ありがとう」が言いづらい人は、「ナイスパパ」「ナイスサポート」など、チームメイトに使うような声がけをしてみてはいかがでしょうか。
時短家事のために「環境整備を実践する人が増えている」と言いましたが、その一方で、環境整備をしたことで、かえって家事がしづらくなってしまったという人もいます。
最近よくあるのは、インスタグラムなどのSNSで見た整理収納の素敵な写真をまねて、同じ収納グッズを買ってきたけれど家事が全くラクにならない、というケースです。その原因は、最終的な見た目だけを再現して、そこに至るまでのプロセスを飛ばしてしまっているからです。
整理収納の場合だと、必要なものだけを選別する→使いやすく分類する→動線も考えて収納する、といったプロセスが必要です。それなのに、見た目から入ってしまうと、一番最後におこなうはずの収納グッズの選択を先にしてしまうので、出し入れのしやすさが後回しになってしまいます。
本来の目的は、見た目をよくすることではなく、家事の負担を減らしたり、家事を楽しめるようにすることですから、その目的に向かって一つひとつプロセスを進めていく必要があります。
時短家事スキルの中でも、環境整備は難易度が高めですし、得手・不得手もあります。それが苦手な人は、動線の見直しだけをするとか、簡単にプロセスを再現できる小技や便利グッズなどの時短家事スキルだけを取り入れるなど、自分に合ったやり方を試してみましょう。
「家事を軽減したいのに、なかなかできない」という人には、家事をラクにするための出費を「もったいない」と感じる人も多いようです。確かに、整理収納を整えるのにも、最新家電や家事代行を利用するのにも、お金がかかります。
しかし、こうした出費は生活時間のゆとりを生むだけでなく、将来の経済的なゆとりにもつながります。例えば、共働きの場合、家事の負担を軽減することで仕事と家事の両立がしやすくなるので、仕事をペースダウンする必要もなく、継続しやすくなるでしょう。時短家事にかかる費用は、将来を考えた必要投資と考えることも大切です。
現在は、ステイホームの推奨で家族の在宅時間が長くなったぶん、家の中は汚れやすくなり、自炊の手間も増えたので、これまで以上に「家事負担をなんとかしたい」と考える人は多いかもしれません。その解決策としても、今後ますます注目したいのが、ロボット掃除機などの最新家電です。
ロボット掃除機以外にも、自動調理鍋、食器洗い機、洗濯乾燥機が時短家事に役立つ家電の代表選手。これらの家電は「値段が高いから」と敬遠する人もいますが、以前よりは価格が下がっており、1万円程で購入できるロボット掃除機や自動調理鍋も登場しています。
本当に便利かどうか、我が家の環境に合っているかどうか、を試してみたい人は、家電のレンタルサービスを利用してみるのもいいでしょう。最近は、定額料金で対象商品が一定期間使い放題のサブスク(サブスクリプションサービス)をおこなう会社が増えています。
家事を楽しむという観点からは、オンラインサロンを活用するのもおすすめです。例えば、オンラインで交流している仲間同士で「毎日5分間、1カ所掃除しよう」という目標を決めます。各自が5分間掃除してからオンライン上で報告を共有すると、自分もやらなきゃ!という気持ちになれます。
こんな風に、在宅時間が長くなっている時期だからこそ、オンラインを活用してモチベーションを高める工夫も、ぜひ試してみてください。
Profile
仕事と家事の両立に苦労した経験から、時間と無駄な労力を省く家事メソッド「知的家事」を考案し、TVや雑誌、WEBなど、さまざまなメディアで活躍中。オンライン上で仲間と交流を深めながら、ひとりでは出来なかった家事が楽しく実践できるようになる「家事トモ☆カレッジ」を主宰。著書に『ゼロ家事』(大和書房)、『写真で分かる!家事の手間を9割減らせる部屋づくり』(青春出版社)、『本間式 置くだけ片づけ』(エクスナレッジ)、『ムダ家事が消える生活』(サンクチュアリ出版)、『名もなき家事を楽しく減らす法』『片づく仕組みの作り方』(王様文庫)、他多数。