この記事の監修者
順天堂大学大学院医学研究科・医学部教授
小林 弘幸さん
1987年順天堂大学医学部卒業。1992年に同大学医学研究科修了後、ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、2003年に順天堂大学医学部小児外科講師・助教授を歴任する。2006年、同大医学部病院管理学研究室教授に就任、総合診療科学講座教授を併任している。専門は小児外科学、肝胆道疾患、便秘、Hirschsprung's病、泌尿生殖器疾患、外科免疫学。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
湯船に浸かると体温が上昇し、血管が広がって血の巡りがよくなる。
血流がよくなると、細胞内の老廃物が血液中に取り込まれやすくなり、疲労の原因とされる乳酸などの老廃物が、汗や尿として体外に排出されやすくなる。
血の巡りがよくなると、酸素や栄養も身体の隅々まで届くようになり、筋肉のコリや痛みの緩和にも効果的。硬くこわばっていた筋肉もほぐれやすくなり、緊張が緩みやすくなるのも疲れが取れたと感じる理由の1つ。
湯船に浸かると、身体が水の圧力によってほどよくしめつけられ、全身がマッサージされたような状態になる「静水圧作用」がはたらく。
この作用によって、手足などの末端にたまった血液や重力によって下半身に溜まりがちな血液が心臓へと押し戻され、血流やリンパの流れがよくなる効果が期待できる。全身の血流がよくなり、むくみの解消にもつながる。
むくみ解消の効果をより高めるために、以下のようなケアをプラスすると良い。
湯船入浴には、自律神経のバランスを整え、身体をリラックスさせる効果がある。
38〜40℃の湯船に浸かると、副交感神経が刺激され、身体が自然とリラックスモードに切り替わる。副交感神経が優位になることで、心拍数や呼吸がゆるやかになり、全身の力も抜けやすく、身体の緊張や筋肉のこわばりも和らいでいく。
また、お風呂に入って「気持ちいい」と感じる、感覚的な要素も非常に大切。「気持ちよさ」を感じることでも、副交感神経が刺激され、血流が改善されたり、自律神経のバランスを整えたりする効果が期待できる。
熱すぎるお湯では交感神経を刺激するため、興奮状態になってしまいます。一方、朝に身体を目覚めさせたいときや、気分を引き締めたいときには、熱めのお湯に短時間入ることで、身体を活動モードに切り替えることができます。
お風呂で疲れを取るためには、副交感神経を刺激して、身体をリラックスモードにすることが重要。お湯の温度を38〜40℃に設定すると、交感神経の興奮を抑えつつ、副交感神経が優位になりやすい。
人によっては少しぬるいと感じるかもしれないが、のぼせやヒートショックなどの体調不良も起こりにくい温度といえる。
また、入浴時間は10〜15分を目安にしよう。身体もしっかりと温めることができ、血流を促進する効果も十分に期待できる。
10〜15分の全身浴がつらいと感じる場合は、無理をせず半身浴に切り替えよう。
まず3〜5分ほど肩までしっかりと浸かり、そのあと半身浴に切り替えると、身体の負担を少なくしつつ、しっかりと身体を温められる。
入浴でリラックスし、疲れをとるためには「気持ちよさ」を感じられることが大切。無理なく、心地よく過ごせる入浴方法でお風呂時間を楽しもう。
疲労回復効果を高めるためには、炭酸系入浴剤を使うのがおすすめ。
お湯に溶けた炭酸ガスが、皮膚から吸収され、血管を広げてくれる効果があるため、血の巡りがよくなり、全身の新陳代謝を上げる効果が期待できる。
身体がより温まることで血行が促され、疲労の回復につながる。
疲れを取るためには、湯船の中でストレッチをおこなうのもおすすめ。筋肉が温まった状態で無理なく動かせるため、身体への負担を抑えられるメリットがある。
筋肉や関節が伸びやすい環境でおこなうことで、ストレッチの効率も高まりやすい。ゆったりとした呼吸を意識しながら、5〜10分を目安にストレッチをおこなおう。
おすすめのストレッチは以下の通りです。
左右にゆっくりと首を回すストレッチ。スマホの使用による「スマホ首」など、首の凝りや緊張を緩和するのに効果的。
合掌をした状態から肩甲骨を寄せるように上半身を開いていく。胸を大きく使えるようになり、呼吸が深くなる。
両手をあげた状態で左右に身体を倒して体側を伸ばす。腸のはたらきを促進する。
42℃以上の熱いお湯に浸かると、交感神経が強く刺激される。これでは身体が活動モードに切り替わり、リラックスした状態になりにくくなってしまう。
疲れをとるためには、副交感神経を刺激する必要があるため、38〜40℃の湯船に入るのがおすすめ。
また、41℃以上になると浴室内での事故率が高まるという報告もあります。とくに高齢者や持病のある人にとってはリスクがあるので、適温で入浴することを心がけましょう。
20分以上の長風呂は、汗をかきすぎることで体内の水分が失われ、脱水症状を引き起こすリスクが高くなる。
また、体温が上がりすぎることで、心臓や循環器にも負担がかかりやすくなる。
さらに、長風呂によって皮脂が過剰に流れ落ちると、肌のバリア機能が低下し、乾燥やかゆみなどのトラブルを招く可能性も。10〜15分程度を目安に、汗が額にじんわりとにじんできたタイミングで湯船から上がるようにしよう。
入浴中は汗をかくことで身体の水分が失われやすく、脱水のリスクが高まる。
とくに汗をかいていることに気づきにくいため、自覚がないうちに水分不足になってしまうケースも。
脱水を予防するためには、入浴前後の水分補給が大切。入浴の前と後でコップ1杯分の水分を補給するようにしよう。
冷たすぎる飲み物は避け、常温の水や白湯を飲むようにすると、身体への負担が少なく、吸収もスムーズ。ミネラルが含まれている麦茶なども、水分補給に適している。
就寝直前の入浴については、できるだけ寝る1時間前までに終えておくのが理想。
入浴後すぐの汗をかいた状態で就寝すると、身体がストレスを感じ、寝つきが悪くなってしまう可能性がある。