この記事の監修者
東京都市大学 人間科学部教授
早坂 信哉さん
高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき4万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「あさイチ」などテレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。
お風呂に入る時間やタイミングに正解はなく、自分の生活スタイルに合っているかどうかが大切。ライフスタイルやその日の気分によって、おすすめの入浴の時間やタイミングは変わってくる。
帰宅してすぐにお風呂に入る「即フロ」は、その後の夜の時間をゆっくり過ごしたい人におすすめ。趣味や家族との団らん、自由時間をしっかり確保したい人に向いている。
一方、食事のあとにお風呂に入る「後フロ」は、就寝時間から逆算したタイミングで入浴しやすいため、睡眠の質を重視したい人に向いている。
帰宅しても、外出先や職場での緊張状態が続き、すぐにリラックスモードに切り替えられないケースが多い。
帰宅してからすぐに湯船に浸かることで、「交感神経」が優位の活動モードから、「副交感神経」が優位のリラックスモードへと自然と切り替わり、夜の自宅時間をよりくつろいで過ごせるようになる。
さらに、副交感神経が優位になると、ぐっすりと眠れる、クリエイティブな作業がはかどる、免疫力アップ、肌の調子が整うなどの効果も期待できる。
夜の自由時間を有意義に使いたい人には、帰宅後すぐの「即フロ」がおすすめ。
入浴を先に済ませることで、そのあとの時間を自分のためにしっかり確保できる。
食事をゆっくりと取ったり、家族や子どもとの団らんの時間、趣味の時間、勉強などの自己投資の時間を持ったりと、就寝までの夜の時間を「やりたいこと」に充てやすくなるというメリットがある。
日本人は、ライフスタイルから交感神経が優位になりやすい人が多い傾向にあります。自律神経のバランスを整える方法としても「即フロ」がおすすめです。
花王がおこなった調査では、「即フロ」をしている人の約8割が「夜の過ごし方に満足している」と回答しています。さらに、約半数の人が「翌日のパフォーマンスが上がった」とも回答していて、「即フロ」にはQOLを高める効果があることもわかってきています。
睡眠の質を上げるためには、就寝の1時間半~2時間前に入浴するといい。
たとえば、23時に就寝予定の場合、21時半頃に入浴を済ませておくと、就寝前に体温が自然に下がる状況となり、深い眠りにつながりやすい。
先に食事を済ませておくことで、就寝時間から逆算し、理想的なタイミングでお風呂に入りやすいというメリットがある。
辛いものを食べると汗をかいたり、料理や後片付けで汚れたりすることも。
とくに小さな子どもがいる家庭では、食事中の汚れが予想以上に多くなりやすい。
食事後に入浴をする「後フロ」では、食事での汗や汚れを一気リセットでき、清潔な状態で就寝できるというメリットもある。
A.朝風呂と夜風呂では、入浴の目的が大きく異なり、それぞれおすすめの入浴方法も異なる。
夜の入浴は、副交感神経を刺激して、身体をリラックスモードに促すのが目的のため、38〜40℃のお湯に10〜15分ゆっくりと浸かるのがおすすめです。
一方、朝風呂は、交感神経を刺激することで、身体を活動モードに切り替えることが目的のため、42℃程度の熱めの湯船に短時間浸かったり、シャワーを浴びたりするとよいです。
身体を活動モードにすることで、シャキッとした目覚めを促すことができるため、とくに朝がだるくて動けない人、起きるのが苦手な人におすすめです。
A.夜、お風呂に入れない場合は、朝に入っても問題ないが、入浴方法に注意が必要。
夜と同じように、38~40℃のお湯に10~15分ゆっくりと浸かると、身体がリラックスしすぎて眠くなってしまう可能性があります。これから活動をはじめる朝に入浴する場合は、42℃程度のやや熱めのお湯に短時間入るのがおすすめです。交感神経が刺激され、身体を目覚めさせる効果が期待できます。
A.基本的に順番はどちらでもよい。一方、運動直後の入浴は避けるべき。
運動直後は、すぐにお風呂に入るよりも、少し時間を空けるのがおすすめです。運動したあとは、疲労物質を除去するために、筋肉に血液を集中させることが重要となります。入浴をすると血液が身体の表面に集まるため、筋肉への血流が少なくなり、疲労回復が遅れてしまう可能性があります。そのため、運動直後にお風呂に入るよりは、まず食事を取る、もしくは少し休憩してから入浴するのが理想的です。運動や激しい活動の後は、30分程度は空けてから入浴するようにしましょう。