この記事の監修者
東京都市大学 人間科学部教授
早坂 信哉さん
高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき4万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「あさイチ」などテレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。
湯船入浴中に汗が出るのは、決して悪いことではなく、むしろ自然なこと。湯船入浴には、身体を温めて体温を上げ、血の巡りをよくする「温熱作用」がある。
汗が出るということは、この作用がよくはたらいて、身体がしっかり温まっているサイン。お風呂の効果がきちんと得られている良い状態といえる。
ただし、お風呂から上がった後も汗が止まらない場合は、体温が上がりすぎている可能性があり、熱中症のリスクもあるため注意が必要。顔や額がじんわり汗ばむ程度で湯船から上がるようにしよう。
お風呂上がりに汗が出るのは、身体が体温を調節しようとしているため。湯船入浴で上がった体温を下げるために汗をかき、その汗が蒸発するときに身体の熱を逃がそうとする。
しかし、汗が止まらない場合は、体温が高すぎる状態が続いている証拠で、身体が一生懸命体温を下げようとしているサイン。お湯の温度が高すぎたり、お風呂に長く入りすぎたりすることが原因と考えられる。
また、浴室自体の温度が高いと体温が下がりにくくなり、汗が長く出続けやすくなるため、浴室の環境にも注意しよう。
温泉などの場合、お湯の温度や入浴時間の長さだけでなく、お湯に含まれる成分が汗の出方に影響することも考えられます。
体温は、汗が蒸発するときに、身体の熱が奪われることで下がっていく。
しかし、暑くて湿気の多い場所では汗が蒸発しにくいため、体温も下がりにくく、汗が身体の表面に残りやすい。
脱衣所が高温多湿になっていると、お風呂上がりになかなか体温が下がらず、汗が出続けてしまう原因になる。
日常的に、お風呂上がりの汗が止まらない場合は、お風呂のお湯が熱すぎたり、湯船に長く浸かりすぎたりしている可能性がある。
まずは、日ごろのお湯の温度や湯船に浸かる時間を見直してみよう。
人の身体は、急に体温が上がると、汗をかいて早く体温を下げようとする。そのため、熱いお湯で湯船入浴すると、汗をかきすぎてしまう。
湯船入浴の温度は、少しぬるいと感じる程度の「38〜40℃」がちょうどいい。湯船に浸かる時間は「10〜15分」を目安にして、額や顔にじんわり汗が出てきたタイミングで上がるようにしよう。
また、メントール配合のクールタイプ入浴剤を使えば、お風呂上がりもさっぱり爽快感を味わうことができる。
ついつい長風呂をしてしまい、お風呂上がりに身体が熱くなりすぎていると感じたら、浴室から出る前に、手や足に冷たい水をかけるのもおすすめ。
冷たいシャワーを手足に10秒程度かけるだけでも、体温を下げる効果が期待できる。
お風呂上がりの汗を抑えるには、浴室から出る前に髪の毛を冷水ですすぐのも効果的。
頭は熱を逃がすために重要な場所のため、水で頭を冷やすことで、体温を下げるのに役立つ。
ただし、身体が「冷たい」と感じると、交感神経が刺激されて活動モードに切り替わってしまう可能性がある。せっかくお風呂でリラックスした状態が長続きしないこともあるので注意しよう。
水で濡らしたタオルを頭に乗せるのも、体温調整にはいい方法。
脱衣所は暑くて湿気が多くなりやすいが、このような環境では汗が蒸発しづらい。汗が蒸発しないとなかなか体温が下がらず、汗が出つづけてしまう可能性がある。
扇風機やサーキュレーターを置くなど、お風呂上がりの環境を整えるのがおすすめ。
基本的には、お風呂上がりに積極的に身体を冷やす必要はありません。ただし、汗が止まらない、のぼせてしまっている場合には、扇風機の風を浴びる・エアコンが効いている涼しい部屋に移動するなど、体温を下げる対策を取りましょう。
お湯の温度や湯船に浸かる時間が適切でも、お風呂上がりの部屋の温度が高すぎると、汗が出やすくなってしまう。
入浴後の部屋の温度は、極端に低すぎず、暑すぎない「25~26℃程度」がおすすめ。20〜21℃など、冷房の設定温度が極端に低すぎる場合は、浴室から上がったあとの急激な温度変化によって「ヒートショック」のリスクが生じる可能性があるので、注意が必要。
ほどよく汗が引く程度の涼しい環境を整えよう。
お風呂上がりの汗対策として、風通しのいい服を選ぶのも1つの方法。
パジャマ・部屋着は、できるだけ通気性や吸水性に優れたものを選ぶことで、入浴後の汗を落ち着かせやすくなる。とくに、綿や麻(リネン)などは風通しがよく汗も吸収しやすいのでおすすめ。
A.汗の種類によって変わります。どのような汗が出ているかを確認しましょう。
お風呂上がりに出る汗には「サラサラとした汗」と「ベタベタとした汗」の2種類があります。
サラサラとした汗は、身体がゆっくりと温められたときに出る汗で、体温調節がきちんとできている証拠です。
一方、ベタベタとした汗は、身体が急に温められすぎたときに出る汗で、臭いの原因となりやすいです。身体を急に温めすぎないためには、適切な温度と時間で湯船入浴するようにするのが大切です。「38〜40℃のお湯に10〜15分」を目安にしてみましょう。