「シャワーと湯船入浴は何が違う?」のタイトル画像。シャワーを浴びている男性のイラストイメージ

シャワーだけではメリットが少ない!湯船に浸かったほうが良い理由とおすすめ入浴法

この記事の監修者

東京都市大学 人間科学部教授
早坂 信哉さん

早坂信哉さんの写真

高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき4万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「あさイチ」などテレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。

1.お風呂はシャワーだけでもいい?

「多くの効果を得るなら湯船に浸かるのがおすすめ!」の説明画像。シャワーのみ:清浄効果 /湯船入浴:温熱・静水圧・浮力・蒸気・香り、さまざまな効果を得られる!

汗を洗い流してリフレッシュしたいときや、熱いお湯で寝起きの身体を活動モードに切り替えたいときなど、目的に応じてシャワーを取り入れることは効果的。

ただし、シャワーだけでは、身体の汚れは落とせても、それ以上の健康効果は期待しにくい。

衛生面ではシャワーだけで十分だが、身体を温める・疲れを取るなど、さまざまな効果を得るには「湯船入浴」を基本にするのがよい。

湯船に浸かることを基本として、シャワーは補助的に取り入れるのがおすすめ。

2.シャワーだけでは得られない湯船に浸かる効果

シャワーだけでは得られない湯船に浸かる効果を解説している早坂信哉さんの写真

湯船入浴には、シャワーでは得られない、たくさんの健康効果がある。
 
おもな健康効果は以下のとおり。

  • 温熱作用:身体を温めて、血の巡りをよくする
  • 静水圧作用:水圧で身体をほどよく引き締めて、むくみ解消に効果的
  • 浮力作用:関節や筋肉の緊張をほぐして、身体をリラックスさせる
  • 清浄作用:皮膚や身体についた汚れを洗い流す
  • 蒸気・香り作用:浴室の蒸気や入浴剤の香りを吸うことで自律神経を整える

シャワーでは、身体の汚れを洗い流す「清浄作用」の効果はあっても、そのほかの効果は期待できない。
 
せっかく毎日お風呂に入るのであれば、シャワーだけで済ませるのではなく、健康に嬉しい効果がたくさんある湯船入浴を基本にするのがおすすめ。
 
湯船入浴をしたいけれど、時間がないという場合は、足湯とシャワーの組み合わせがおすすめ。洗面器や浴槽にお湯を溜めて足を浸しながらシャワーを浴びることで、湯船入浴に近い効果を得ることができる。
 
湯船に浸かることで得られる健康効果は、以下の記事で詳しく解説。

3.健康効果が期待できるおすすめの入浴方法

温度は38~40℃程度で全身浴

38度のお湯に気持ちよさそうに浸かっている男性のイラストイメージ

少しぬるいと感じる程度の「38〜40℃」のお湯がおすすめ。のぼせやヒートショックなど、入浴による体調不良も起こりにくい温度。
 
夏場は、40℃だと身体に負担をかけることがあるため、38℃くらいのぬるめの温度で入浴するのがおすすめ。自律神経のバランスが整いやすく、夏バテ対策やリラックス効果も期待できる。
 
また、湯船に浸かるときは、肩までしっかりお湯に浸かる「全身浴」が理想的。半身浴は、全身浴に比べて入浴の健康効果が弱まってしまう。
 
とくに半身浴では、「温熱作用」が弱まるため、血の巡りが十分によくならない。また、全身浴のほうが、水圧によってむくみの解消につながる「静水圧作用」も強くなる。

入浴時間は10~15分程度

10~15分を目安に湯船で身体を温めている男性のイラストイメージ

湯船に浸かる時間は「10~15分程度」を目安にしよう。38~40℃のお湯なら、10〜15分でしっかり身体が温まる。長く入りすぎると、身体への負担につながるため注意が必要。
 
顔や額がじんわり汗ばんできたら、身体が十分に温まったサイン。このタイミングで、湯船から上がるようにしよう。

早坂信哉さんの写真

入浴中に汗がダラダラ流れ出るようであれば、体温が上がり過ぎていますので、少し汗ばむ程度を目安に上がるようにしてください。また、入浴すると、汗をかいて水分やミネラルが失われるため、入浴の前後は水分補給をおこなうようにしましょう。

入浴のタイミングは就寝1~2時間前

20時に入浴して22時に就寝する男性のイラストイメージ

人の体温は、夕方に最も高くなり、夜にかけてゆっくり下がる仕組み。体温が下がるタイミングで就寝すると、眠気を感じやすくなる。
 
そのため、湯船に浸かって体温をいったん少し上げて、そこから急に下げる状態をつくると、質の良い眠りにつながる。
 
入浴で上がった体温は、約90分後に下がり始めるため、寝る1〜2時間前の湯船入浴がベストタイミング。
 
もし、お風呂に入ったあとすぐに眠らなければいけない場合、体温が上がりすぎないよう、サッと入浴しよう。

4.暑い夏こそシャワーだけでなく湯船に浸かろう!

「暑い夏こそシャワーだけでなく湯船に浸かろう!」と語っている早坂信哉さんの写真

夏は、冷房の効いた部屋にいたり、冷たいものをたくさん飲んだりして、知らないうちに身体が冷えてしまうことが多い。身体が冷えると、だるさや疲れ、肩こり・腰痛を引き起こすこともある。

シャワーだけでは、身体を温めたり、疲れを取る効果が十分ではない。暑さで疲れが溜まりやすい夏こそ、湯船に浸かってしっかり疲れを取ることが大切。

熱いお湯に浸かる必要はなく、38℃くらいのぬるめのお湯で十分。副交感神経が刺激されてリラックスでき、身体の調子を整えるだけではなく、夏バテ防止にも役立つ。

ただし、ぬるめの湯では、身体を温める「温熱作用」が弱くなり、血の巡りが十分によくならないことがあるので、炭酸入浴剤を入れるのがおすすめ。炭酸ガスが血管を広げて、血液の流れをよくしてくれる。メントール配合のクールタイプ入浴剤は、湯上がりもさっぱりとしていて暑い時期におすすめ。

「ぬるめのお湯と炭酸入浴剤で…暑い夏を乗り切る!」の説明画像。「2つの要素を組み合わせることが暑い夏を乗り切るおすすめの入浴法!」38℃のお湯でリラックス+炭酸で十分な血流改善

早坂信哉さんの写真

半身浴では、入浴の健康効果も弱まってしまうため、できるだけ肩まで浸かる全身浴がおすすめです。全身浴がつらいと感じる場合は、体温と同じくらいまでお湯の温度を下げたり、半身浴にしても大丈夫です。全身浴と比べると少し効果は弱くなりますが、シャワーだけよりは、半身浴のほうがメリットが大きいです。

5.シャワーだけの場合の5つのポイント

シャワーを42℃程度の高めの温度設定にする

42℃のシャワーを気持ちよさそうに浴びている男性のイラストイメージ

シャワーの水は、蛇口を出てから身体にあたるまでの間に、空気中で冷えてしまう。実際に身体にあたるときには、給湯器で設定している温度よりも低くなっていることが多い。
 
そのため、シャワーを使うときは、40〜42℃の熱めに設定するのがおすすめ。湯船入浴に比べて身体が温まりにくいので、少し長めにシャワーを浴びると効率よく身体を温められる。
 
夏は38℃程度のぬるめのシャワーでも大丈夫。ただ、「寒い」と感じる場合は、交感神経が刺激されてしまうため、少し温度を上げる。身体にお湯が触れたときの体感温度が、体温よりも低い温度にならないようにすることがポイント。

首から背中は特に長めの時間温める

首から背中をシャワーでじっくり温めている男性のイラストイメージ

首から背中の範囲(とくに肩甲骨の間)には、体温を上げたり、代謝をよくするための細胞(褐色脂肪細胞)がたくさんある。ここを温めることで、全身がポカポカしてくる。
 
また、首の周りには、大きな血管が集中している。この部分をしっかり温めることで、身体全体の血の巡りがよくなり、体温も上がりやすい。

足先だけはお湯につけておく

洗面器にためたお湯で足湯をしているイラストイメージ

入浴する時間がなく、シャワーだけで済ませる場合は、足湯を組み合わせるのがおすすめ。

洗面器やバケツにお湯をためて、足をつけながらシャワーを浴びると、身体がしっかり温まって、気持ちよさもアップする。

または、浴槽に足首程度の深さまでお湯をためて、そのなかに立ってシャワーを浴びる方法でもよい。これならビジネスホテルなど、自宅以外の場所でも気軽に実践しやすい。

少量のお湯でも、足元から温めることでシャワーだけのときよりも身体がしっかり温まる。

浴室をシャワー前にあたためておく

冷えた浴室をシャワーで温めているイラストイメージ

温かい浴室から寒い脱衣所に出るなど、温度差がある場所に移動すると、身体が驚いて急に血圧が上がることがある。これが「ヒートショック」と呼ばれる現象で、心臓や血管の負担となり、大きな病気につながることも。
 
ヒートショックは高齢者だけでなく、若い人でもリスクがあるため、浴室と脱衣所の温度差はなるべく小さくしておくことが大切。
 
また、寒いと感じると交感神経が刺激され、お風呂でのリラックス効果も弱まってしまう。
 
浴室が冷えている場合は、入る前に暖房をつけておくなどして、浴室を暖かくしておくのがおすすめ。
 
暖房がない場合でも、お風呂に入る前に高い位置からシャワーを出しておくと、蒸気が充満して十分に浴室が温まる。

季節に応じて脱衣所の温度をコントロールする

扇風機で脱衣所の温度を調整しているイラストイメージ

「ヒートショック」を防ぐためには、浴室と脱衣所の温度差をなるべく小さくしておくことが大切。とくに冬は、脱衣所が冷えやすいため、服を脱ぐ前にヒーターや温風機で温めておくようにしよう。
 
夏は、扇風機を使って脱衣所を涼しくしても、大きな温度変化が出にくい。ただし、強い冷房で脱衣所を極端に冷やし、大きな温度差が出てしまうような場合は、ヒートショックのリスクが生じる可能性もあるため、扇風機を回す程度に留めよう。

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