くらしの現場レポート

人生100年時代、人もペットも幸せに
シニア世代のペットとの暮らし

2020.09.08

子どもが独立して二人きりになった夫婦や、ひとり暮らしのシニア世代にとって、ペットは癒しや安らぎを感じさせてくれる大切な存在になっています。その一方で、将来もペットの世話を続けることができるかという気がかりもあるようです。今回は、ペットと共に暮らすシニア世代のおもいや暮らしについて紹介します。

ペットを飼いたい人は、シニア世代で増えている

2025年には団塊世代が75歳を迎え、日本国民の4人に1人が75歳以上となります。
また、高齢社会白書(2019年版)によると65歳以上世帯のうち、夫婦のみ世帯は約3割、ひとり暮らし世帯を含めると半数を超えており、その割合はさらに高まると思われます。

犬や猫を飼いたいと思っている人は3年前の2016年と比べて全般的に減少傾向ですが、60代では猫を、70代では犬や猫を飼いたい人の割合が増加しています 。人生100年時代の今、ペットを家族として迎えたいと考えるシニア世代は増えているようです。

年代別にみた犬と猫の飼育意向のグラフ 出典:一般社団法人ペットフード協会「令和元年 全国犬猫飼育実態調査」

※画像をクリックすると拡大してご覧いただけます。

癒やしや健康維持のモチベーションに

ペットを飼っているシニア世代にインタビューしたところ、ある80代夫婦は、夫が「猫がいてくれるだけで楽しい。ストレスもなくなる。」と話し、妻は「ペットの世話は、夫の良い運動になっている。愛情ある一面も見ることができて嬉しい。」と話してくれました。

また、ひとり暮らしの70代女性は、「猫によく話しかけているから、ひとり暮らしでも言葉がすぐに出てくる。猫のためにも健康でいたい。一緒に元気でいようねと思う。」と元気に毎日を暮らすモチベーションにもなっていました。

ペットと暮らすことは、世話のために体を動かしたり、家族・友人との会話のきっかけになるなど、健康の維持や生活の豊かさにつながっているようです。また、自分がペットから癒しを得るだけでなく、ペットが快適・幸せに暮らしていることが自分の幸せにもつながると感じているようでした。

●60代夫婦

猫がいることで夫婦の会話が増え、喧嘩が減った。(夫・67歳)

朝、猫に起こされるようになり、規則正しくなった。寝ているときも抱き枕のようで癒される。(妻・66歳)

●70代夫婦

子ども達が独立した後、猫が妻との会話のきっかけになっている。(夫・74歳)

帰宅すると迎えてくれ、しぐさの可愛さに癒される。(妻・71歳)

●80代夫婦

猫が幸せに暮らせるように世話をしている。猫も人間と同じように大切。(夫・83歳)

階段を昇り降りする猫を追いかけることは、夫のいい運動になっている。(妻・80歳)

一方、「最近、猫をシャンプーするときに腰痛になることがある。」(67歳・男性)、「自分がもっと高齢になっても猫の面倒をずっと見ることができるか不安。」(74歳・女性)といった身体的な負担や将来を心配する声もありました。

頼れる関係づくりや民間サービスの情報収集で備えを

自分がいつまでも元気にペットの世話をできるかどうか。ペットを飼っているシニア世代にとって、飼い主とペットの「老老問題」は最も不安に思うことではないでしょうか。
思うように面倒を見られなくなったときのために、日頃から身近に頼れる人間関係を作っておくことや、ペットの一時預かり、ペットシッターの利用、里親を探してくれる民間サービスなどを調べて相談しておくことも重要です。

また最近は、飼っているペットと一緒に暮らせる民間の共生型老人ホームも増えています。中には、同居だけでなくペットの最期まで任せられる施設もあるようです。
ペットを終生、責任を持って飼育したいと思っているものの、いつまでも元気に世話をしてあげられるか不安に思うシニアにとって、いざというときの支援方法を知っておくことは、ペットと安心して過ごすためにも大切な備えになります。

ペットとのふれあいを通じて、こころ豊かな暮らしを

ペットを飼いたくても難しい場合は、一時預かりのペットボランティアへの参加や、保護猫カフェの利用などで動物とふれあうこともできます。心を癒やしてくれ、生活に張り合いを感じさせてくれるペット。動物を慈しみ、ふれあいを大切にしながら、いつまでも健康でこころ豊かに暮らしていきたいですね。

調査概要

「猫といっしょに暮らす高齢者」
◎2019年2月/郵送調査/首都圏在住 猫飼育者30~80代/100人男女
◎2018年12月~2019年8月/家庭訪問調査/首都圏在住 猫飼育者30~80代/11世帯

「ペットのいる暮らし研究」
◎2019年9月/ペット共生型特別養護老人ホーム見学

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