達人コラム

予防医学研究者 石川善樹さん
人生100年時代、これまでの生き方と何が違うのか?

2018.11.07  |  おとなの男性、高齢社会

【達人コラム】予防医学研究者/石川善樹さん

人生100年時代と言われる昨今。健康寿命も延び、継続雇用の延長制度で60代以降も働き続ける男性が増えています。60代は、まだ人生の折り返し地点を少し過ぎたあたり。これから何十年も続く人生をより豊かに生きるために必要なこととは? 「人がよりよく生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行っている石川善樹さんに、お話をうかがいました。

100歳まで生きる前提で人生を考える

予防医学研究者/石川善樹さん

人生100年時代構想会議が内閣府で開催されるなど、これからの日本人は100歳まで生きるかもしれないという議論が進んでいます。しかし、「あなたは、何歳まで生きると思いますか?」と尋ねると、大抵の日本人は「80歳」と答えます。すでに90歳まで生きる人はめずらしくなく、100歳まで生きる可能性が高い時代が来ています。
 
仮に100歳まで生きるとして、それを四季になぞらえるなら、50~75歳は人生の秋。学びの春、働く夏を経て、実りを享受する秋、そして休む冬というわけです。
 
しかし、これまでの日本人は、20年学び、40年働き、60歳以降はゆっくり休むという3ステージで人生を考えていました。だから、50~75歳のサードエイジをいかに生きるのか、ロールモデルがいないという現実があります。

実り豊かな秋へ向けてのライフシフト

予防医学研究者/石川善樹さん

くらしの現場レポート『これからもより良く生きるために 働く60代男性たち「家族も自分も仕事も大切に」』でも、60代で生き生きと働いている方々がいましたね。ある調査では、60歳まで働き詰めてからその後の仕事や人生を考えるよりも、思い切って50歳前後で、仕事も含めて今後の人生を見つめ直したほうがプラスに作用するという結果がありました。なぜなら、50歳はまだ新しいことにチャレンジする元気もあり、最初は苦労するかもしれませんが、それに適応できた自分に大きな自信が持てるからです。
 
また、秋にあたる人生では、若い頃のように「働く」一辺倒というのは体力的・精神的にもきついでしょう。例えば、「学ぶ」「遊ぶ」「働く」のバランスを意識しながら、それぞれの分野でコミュニティを持つことが理想的と考えられます。
 
新たな場での関係づくりに関して言うと、女性はおしゃべりする中で仲良くなりますが、男性は共同作業を通じて仲良くなる傾向があります。今後はそのような違いも考慮した、男性が参加しやすい場も増えてくるのではないでしょうか。

「第二の青春」を楽しむという発想

予防医学研究者/石川善樹さん

サッカーの試合に前半と後半があるという話は、もしかすると夫婦関係にも言えるかもしれません。夫が定年した後、残る後半の夫婦生活をどうしていくのか。
 
これはあくまで感覚の話ですが、何をすれば奥さん孝行になるのか、考えあぐねている男性が多いように思います。どうも妻側が求めているのは、(男性が望むような)夫婦旅行などではなく、台所からの解放のようです。つまり、放っておいても夫が買い物に行き、自分の分は自分で料理して食べる。その中で自分の健康にも気を遣うようになる。そんな家庭の中で自立した夫になることが、奥さんが望む「奥さん孝行」だと言うのです。そういう意味で言うと、これからの男性は料理を覚えることが必須のスキルになるかもしれませんね。

予防医学研究者/石川善樹さん

また、「終の棲家」という概念もこれからは変わるのではないでしょうか。例えば、50歳までは郊外の家に住んでいたとしても、子どもが成人して家を出ていけば広すぎて不便という状況も起こります。すると、50歳からは都心のマンションに住むというような、環境の大きな変化が起こります。そうした時に、地域コミュニティとの付き合いもまたゼロから作らなければならず、さりとてそれを面倒くさがらず、新しいチャレンジとして捉えて楽しむことが出来るかどうかという問題も出てきます。
 
そうした大きな変化を嫌うのは、人間の常です。しかし、そこはあえて目先の不便さにとらわれることなく、視点を高く持ってみるのはどうでしょうか。人生100年時代には、今までの日本人が享受できなかった、長い実りの秋があるのですから。それはある意味「第二の青春」とも言えます。ぜひ、人生100年という発想で、自由に前向きにチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

Profile

予防医学研究者/石川善樹さん

予防医学研究者
石川善樹(いしかわよしき)さん

1981年生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院卒業後、自治医科大学で博士(医学)を取得。「人がよりよく生きるとは何か(Well-being)」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。(株)Campus for H共同創業者。講演、執筆活動も幅広く行っている。

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