2018.03.06

震災の教訓を忘れないでほしい
被災経験者の声から学ぶ「備え」

東日本大震災から7年。その後も大きな被害をもたらす地震や災害が日本各地で発生し、自然災害の増加を実感している人が増えている一方、被災地であっても防災意識の薄れを感じている人もいます。

おもいをつなぐために

昨年は、震災の経験から今でも水道水や風呂の水を汲みおきしている仙台市の方のくらしをお伝えしました。

記事を読んで、東北の被災地の方からは、「日頃の備えの重要性を他の地域の人にも伝えたい。(岩手/40代女性)」「震災を忘れないでほしい。(宮城/40代女性)」といった感想を多くいただきました。また熊本地震を経験した方からは「対策していなかったことを後悔した。(熊本/30代男性)」「震災は誰の身にも降りかかることを痛感した。(熊本/20代男性)」といった声も寄せられました。

それらの声を受けて、「くらしの研究」読者に家庭での防災対策のアンケートを実施しました(2017年12月)。

被災経験の有無で差が出る防災対策

今回のアンケートでは、台風、豪雨、地震、噴火などの自然災害による被災経験のある人は23%でした。

家庭で防災対策をしていると回答した人は、被災経験の有無にかかわらず、回答者全体の40%の実施にとどまりました。しかし、被災経験者で防災対策をしている人は56%と半数以上で、被災経験のない人の35%とは、かなりの差がみられました。

■家庭での「防災対策」実施状況

被災経験別 家庭での「防災対策」実施状況のグラフ 2017年12月「くらしの研究」読者 被災経験あり3,002人 被災経験なし9,899人(花王 生活者研究センター調べ)

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被災経験者がしている防災対策の内容

自然災害による被災経験者が家庭でおこなっている防災対策は、食料、飲料水などの備蓄をはじめとする、さまざまな内容が挙がりました。

■被災経験者が家庭でしている防災対策

被災経験者が家庭でしている防災対策のグラフ 非常食・食料品の備蓄82% 飲料水の備蓄79% トイレットペーパーや常備薬など生活用品の準備62% 非常持ち出し袋の準備50% 2017年12月「くらしの研究」読者 自然災害による被災経験があり、家庭で防災対策をしている人1,678人(複数回答)(花王 生活者研究センター調べ)

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■防災対策の実施率(項目抜粋)

(被災なし全国平均、被災あり全国平均、被災あり東北3県、被災あり熊本県 での比較)

  • 家具などの転倒・落下防止策のグラフ 被災なし全国42% 被災あり東北3県59% 被災あり熊本県52% 2017年(花王 生活者研究センター調べ)

  • 寝室に懐中電灯や靴などを用意のグラフ 被災なし全国35% 被災あり東北3県54% 被災あり熊本県49% 2017年(花王 生活者研究センター調べ)

  • 家族間の連絡方法の確認のグラフ 被災なし全国34% 被災あり東北3県49%  被災あり熊本県48% 2017年(花王 生活者研究センター調べ)

  • 風呂の水のためおきのグラフ 被災なし全国20% 被災あり東北3県40% 被災あり熊本県18% 2017年(花王 生活者研究センター調べ)

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大きな震災を経験した東北3県(岩手県、宮城県、福島県)や熊本県では、「家具などの転倒・落下防止策」や「寝室に懐中電灯や靴などを用意する」、「家族間の連絡方法を確認する」などが被災経験のない人の全国平均を大きく上回り、災害経験があるからこそ対策している様子がみられました。また「風呂水のためおき」は東北3県で引き続きおこなわれていることもわかります。

実際に役立ったこと、備えていること

被災経験があるからこそ伝えられる経験者の声を挙げてみました。

<用意していたから助かった!>

携帯の懐中電灯は、電池消耗が激しく、専用の懐中電灯は必須。ラジオは情報収集に本当に有効で、たまに流れてくる音楽に癒されました。(熊本/20代女性)

貴重品や子どもの保険証、母子手帳などをまとめていたので避難までの時間短縮ができました。(島根/30代女性)

水に流せるティッシュやウェットティッシュがあったことが良かった。水が不足し、トイレを流せないこと、手や食器類を毎回洗えなかったため。(北海道/40代女性)

真冬に停電で、ポータブルストーブとロウソクが役に立った。これがないと気温氷点下の地域なので凍死するし水道も凍る。(北海道/40代女性)

<困った経験が、備えるきっかけに>

オール電化は停電になると、⽔も出なくなり、炊事、洗濯、お⾵呂ができなくなりました。以来、⾵呂⽔をため、保存⾷を常に揃えています。 (岩手/40代女性)

物が倒れ、食料がなく、とても辛い思いをしました。靴を部屋に置き、家具を固定、防災グッズ、非常食の保管、緊急時の集合場所などを考えるきっかけになりました。 (山形/30代女性)

地震、津波で被災し、食べるもの飲むもの着るものすべてに困ったのですぐに持ち出せるように備えています。 (岩手/20代女性)

ガソリンがなくて大変困りました。スタンドにもないし、探している最中にもガソリンが減るので最悪でした。今は給油メーター半分になると満タンにしています。 (福島/40代男性)

<役立つことに気付いた!>

使い捨てカイロで暖を取り、布団にくるまってしのぎました。たまたま家にあったものでも、防災グッズになるんだなぁと感じました。 (神奈川/30代女性)

水道が出ない時に井戸水を提供してもらったり、商店の方から必要なものをいただいたり、町内会も大切だと思いました。 (宮城/30代女性)

災害を経験し、近所付き合いが良い方に変わってきている。挨拶をしたり、声を掛け合う大切さを実感しました。 (宮城/50代女性)

自分一人ではどうにもならない。家族、そして近所の人たちとの協力体制があることが一番防災には役に立つ。 (宮城/60代男性)

備えるきっかけにしてほしい

自然災害はいつ起こるかわかりません。経験のない地域では「災害が少ない県なので、防災意識が低く、つい後回しにしています。(岡山/30代女性)」といった声がありました。

一方、「静岡県民は子どもの頃から地震と津波と富士山の噴火に関して教育されて育ちます。防災訓練の回数も多く、学校、地域、企業ごとにも実施。(静岡県/30代女性)」や「広島にも南海トラフ地震がくるかもしれないと聞き、すごく心配になり、防災グッズを玄関に置き、スリッパを布団の近くにおいて寝ています。(広島県/20代女性)」など事前に備えている人の声も集まりました。

備えること、備える意識を持ち続けることは難しいかもしれませんが、3月11日や防災の日(9月1日)など日を決めて、また、家族が増えたり、地域や学校、職場が実施する避難訓練などを機に、定期的に家族で話し合ったり見直しするタイミングを決めておくと実施しやすいようです。

一度準備をすればあとは年末に見直すだけで、そんなに手間ではない。(神奈川県/30代女性)

子どもが生まれて、大切なものができた事でいざという時の備えが必要だと思いました。(岐阜県/30代女性)

ふだんの生活の中でできることから防災対策を始め、それを定期的に見直していきましょう。
「自分たちの経験を他の地域の人にも活かしてほしい。」という被災した人たちの声を自分ごとと捉えて、備えを始めてみませんか。

自分の身に起こらないと思いがちですが、ここなら大丈夫、今までこんなこと起きたことはない、が通用しないということをたくさんの人に知ってもらいたい。 (宮城/20代女性)

地震はいきなりきます。常に考えるのは無理なので、意識できるように目につくところに持ち出し袋を置いています。押し入れに入れておいても、地震がきたら押し入れは開きません。 (熊本/20代女性)

調査概要

◎ 2017年3月/インターネット調査/『くらしの研究』読者/9,533人

◎ 2017年12月/インターネット調査/『くらしの研究』読者/12,901人 

\ 読者から寄せられた感想 /

近い将来、東南海地震がいつ発生してもおかしくない現在、どうしても後回しになっている震災の備えに対して、真剣に考える良いきっかけになりました。 (48歳・女性・和歌山)
 

被災経験のある人の声はとてもためになります。備えているだけではなくそれらを有効に使えるようにしておかなければと思います。 
(27歳・女性・北海道)
 

2011年、我が家も被災しました。被災していない他県の人たちにも忘れないでいてほしいし、こうして記事にしてもらえること、関心をもってもらうことに感謝しました。 (37歳・女性・宮城)

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