この記事の監修者
東京都市大学 人間科学部教授
早坂 信哉さん
高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき4万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「あさイチ」などテレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。
冷水シャワーは、身体が「冷たい」と感じるほどの極端に冷たい水ではなく、夏場の水道水(30℃程度)くらいの温度で十分。
30℃前後とは、「温水プール」と同じくらいの温度。体温より低い温度であれば冷水シャワーとしての効果があるため、30℃より高い温度でもOK。あまりに冷たい水は身体に負担がかかるので注意。
また、冷水シャワーと似た入浴法として、温かいお湯と冷たいシャワーを交互に取り入れた「温冷交代浴」も人気。
温かいお湯に3分浸かり、手先や足先に冷たいシャワーを30秒かけるのを3回ほど繰り返す。温かい湯によって血管が広がり、冷たい水で血管が収縮するため、冷水シャワーのみよりも、効率よく血流を改善できる。温冷交代浴は、運動やトレーニング後に取り入れるのは効果的だが、身体への負担が大きいため、体調が悪い時は避けるように。
夏に冷たいシャワーを浴びることで、おもに2つの効果が期待できる。
疲労を回復するには、「身体のバランスを整える=自律神経を整えること」が大切。身体のバランスを整えるやり方は大きく2種類ある。
入浴は、血行が促進されることにより疲労が回復するが、冷水シャワーの場合、運動やトレーニングのあと、筋肉の痛みを冷やして疲れを取る。
日常生活では、暑い外から帰ってきた時に冷水シャワーで体温を下げる、汗を流してリフレッシュする、という取り入れ方がおすすめ。
冷たいシャワーは、落ち込んだ気持ちを和らげる効果も期待できる。
肌が冷たい水に触れて、交感神経が刺激されることで、脳内の神経伝達物質が活性化され、ストレス解消にもつながる。
厚生労働省が発表している「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」のなかでも、気を紛らわす方法の一つとして冷たいシャワーが提案されている。
冷水シャワーは、体温より低い温度で「ちょっと冷たい」と感じるくらいで十分。夏は、水道水が自然と30℃くらい(温水プール程度)になるため、そのままの水道水を使うといい。
交感神経を軽く刺激する(身体を軽く刺激する)ことが目的のため、全身に浴びる必要はなく、手先や足先にシャワーをかけるだけでOK。慣れてきたら徐々に浴びる範囲を広げてもよい。
無理に冷たい温度にしたり、全身に冷たいシャワーを浴びたりはせず、「ちょっと冷たくて気持ちがいい」と感じる程度に留めておくようにしよう。
冷水シャワーのおもなデメリットは、以下の2つ。
体温より極端に低い水温のシャワーを浴びると、身体が冷えてしまうことも。
とくに体調が悪い場合、風邪をひいたり、症状が悪化するリスクがあるので要注意。体調不良のときは、冷たいシャワーを浴びないようにして、体調に合わせて無理なく取り入れよう。
温かいお湯でシャワーを浴びると、皮脂なども柔らかくなり落ちやすくなるほか、肌の毛穴が開いて、汚れをスムーズに落としやすい。逆に、冷水シャワーは皮脂が硬くなり、毛穴を引き締めてしまうため、身体の汚れが落ちにくいというデメリットがある。
まずは、ぬるま湯や温かいお湯で身体の汚れや皮脂を落としてから、冷水シャワーを浴びるのがおすすめ。
夏は冷房の効いた部屋で過ごしたり、冷たい飲み物を飲んだりして、知らないうちに身体が冷えがち。
汗をかいて帰ってきたときに冷水シャワーを浴びると、一時的にさっぱりして気持ちいい。しかし、冷水シャワーでは、夏の疲れを取ることは難しい。むしろ、疲れがたまりやすい夏場こそ、お風呂に入って身体をしっかり温めることが大切。
湯船入浴には身体を温めて血の巡りをよくする「温熱作用」や、水中で身体をリラックスさせる「浮力作用」など、疲労回復を促す効果がある。冷水シャワーでリフレッシュすることも大切だが、長い夏を乗り切るには、湯船入浴を通じて身体を芯から温めて、暑さに負けない身体作りをしていくことが大切。また、夏の入浴は、冬の入浴とほぼ同程度に将来の要介護状態となるリスクをさげるという長期的な健康への研究結果がある。
夏に湯船入浴する際、具体的にどのような点を意識したほうがいいのか。以下の3つのポイントを意識してみよう
夏場は気温が高いため、熱いお湯は身体への負担が大きい。そのため、38℃程度のぬるめの水温で入浴するのがおすすめ。
夏場は、外と室内の温度差が大きく、暑い環境・涼しい環境を行き来することが多い。温度差が激しい状態が続くと、交感神経にスイッチが入った状態が長くなり、脳や身体が疲れ、夏バテの原因にもなってしまう。
38℃のぬるい温度に浸かると、副交感神経が優位になるため、交感神経と副交感神経のバランスが整う。結果として、夏バテ改善効果やリラックス効果を得られる。
ぬるめの水湯では、身体を温める「温熱作用」が弱くなり、湯船入浴のメリットの1つである血流改善効果が薄れてしまいます。そのため、炭酸入浴剤を使うのがおすすめです。お湯に溶けた炭酸ガスが温熱効果を高め、血行を促進してくれます。
湯船に浸かる時間は、10〜15分程度が目安。この時間で身体がしっかり温まり、血流改善の効果も期待できる。
とくに夏場は、浴室の気温や湿度が上がりやすく、長時間入っていると熱中症になるリスクも高まる。
顔や額に少し汗が出てくる程度を目安とし、入浴中に息苦しさやつらさを感じた場合は、すぐにお風呂から出て休むようにしよう。
湯船入浴にはさまざまな健康効果があるが、半身浴では、このような入浴によって得られる効果も半減するため、できれば肩まで浸かる全身浴がおすすめ。
ただし、全身浴は体に水圧がしっかりかかり負荷となるため、全身浴で息苦しくなる人は無理せず半身浴としたり、体温と同じくらいの温度まで水温を下げるのも1つの方法。心臓系や呼吸器系で治療中の人は入浴法を主治医に確認するとよい。
全身浴と比較すると健康効果は下がるものの、シャワーだけで済ませるよりは半身浴の方がメリットは多い。
A.湯船入浴を基本とし、状況に応じて冷水シャワーを取り入れるのが望ましい。
湯船入浴と冷水シャワーは、状況に応じて使い分けましょう。湯船に浸かった方が健康効果は高いため、湯船入浴をベースとし、冷水シャワーはオプションのように取り入れるのがおすすめです。夏場の場合、汗を流すために一度冷水シャワーを浴び、少し時間を置いてから湯船に浸かるといいですね。なお、冬場の冷水シャワーは、身体への負担が懸念されますので、避けるようにしましょう。
A.眠気が覚めてしまう可能性があるため、寝る前は避けるべき。
冷水シャワーは交感神経を刺激するので、刺激により眠気が覚めてしまう可能性があります。就寝前に冷水シャワーを浴びるのは避けるようにしましょう。寝る前以外の時間帯であれば、朝や昼、夕方に浴びても問題ありません。