この記事の監修者
東京都市大学 人間科学部教授
早坂 信哉さん
高齢者医療の経験から入浴の重要性に気づき4万人以上の入浴を調査した、入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「あさイチ」などテレビやラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「最高の入浴法」(大和書房)「おうち時間を快適に過ごす入浴は究極の疲労回復術」(山と溪谷社)など。
お風呂でのぼせるのは、身体が温まりすぎることによって「軽い熱中症」のようになってしまうから。お湯が熱い・長時間入りすぎることなどがおもな原因。
体温が急に上昇し、身体の調整機能が追いつかなくなり、ぼんやりする・大量に発汗する・気分が悪くなるといった症状が出る。
42℃以上のお湯に長時間浸かるとのぼせてしまう可能性があるため、湯温は「38〜40℃」、入浴時間は「10〜15分」を目安にするのがおすすめ。
湯船に浸かっているとき、汗がダラダラ流れるように出始めたら、体温が上がりすぎているサイン。のぼせてしまわないためにも、額にじんわり汗がにじんできたら、無理をせず湯船から出るようにしよう。
入浴中の水分補給は、のぼせを防止するための重要なポイント。入浴中は汗をかいて水分やミネラルが失われやすいため、脱水予防のためにも入浴前に水分を補給しておこう。
入浴前に十分な水分をとっておくと、お風呂で汗をかいても体内の水分が減りにくくなり、体温調整がしやすくなるというメリットがある。
入浴前だけでなく、できるだけ入浴中・入浴後にも水分を摂るのがおすすめ。とくに入浴中の水分補給は、脱水を防ぎ体温の上昇をゆるやかにする効果が期待できる。
飲み物は、ミネラルを含む麦茶がおすすめ。水よりも体内への吸収がよく、脱水の改善作用が強いという研究結果がある。
湯船に浸かるとき、お湯の温度は「38〜40℃」くらい、入浴時間は「10〜15分」を目安にしよう。
少しぬるく感じるかもしれないが、この温度なら年齢や体力に関係なく入ることができ、のぼせの心配も少ない。この湯温で10〜15分程度お湯に浸かれば、身体がしっかりと温まる。夏場などでは、38℃くらいのぬるめの温度で湯船入浴すると、のぼせなどの不調が起こりにくい。
ただ、体温よりも低い温度では冷たすぎて交感神経が刺激されてしまうため、リラックス効果が得られにくい。湯温は下げすぎないように注意しよう。
38℃くらいのぬるめの湯では、身体を温める「温熱作用」が弱まってしまうため、炭酸入浴剤を使うのがおすすめです。お湯がぬるくても、炭酸ガスの効果で血管が広がり、血流を改善する効果が期待できます。
のぼせ予防には、濡らしたタオルを頭に乗せる方法も効果的。
入浴中に冷たい水で濡らしたタオルを頭に乗せると、頭の皮膚が冷え、脳の温度が下がり、のぼせを防ぐ効果が期待できる。
入浴中にタオルの水分が蒸発すると効果が弱くなるため、固く絞りすぎず、少し水気が残った状態で頭に乗せるのがポイント。
のぼせは、体温が急激に上がったことによる軽い熱中症のような状態なので、身体を冷やすことが重要。涼しい場所に移動して、濡れタオルや冷たいペットボトルを使って、頭や手先・足先を冷やそう。
凍った保冷剤などがなくても、体温より低い温度であれば十分。手にも多くの血管が通っているため、冷やしていたペットボトルを握るだけでも、身体を冷やす効果が期待できる。
また、湯船から出たすぐ後にのぼせを感じたら、低い温度のシャワーを手や足にかけると素早くクールダウンできる。
冷凍庫で冷やしたものなど、極端に冷たいものを長時間身体に当てると、凍傷(とうしょう)のリスクがあります。局所を冷やすよりは、浴室から涼しい場所に移動して、適度な冷たさで冷やすように心がけてください。
お湯の温度が高すぎたり、長風呂をしすぎたりすると、汗でたくさんの水分が失われて脱水になる。のぼせを感じたらすぐに水分補給をしよう。
ただし、一気に大量の水を飲むと身体へ負担がかかるため、少しずつ飲むこと。ブドウ糖を含むスポーツドリンクなどは、水よりも身体に吸収されやすく、脱水を早く改善する効果が期待できる。
A.小さな子どもや高齢者がのぼせやすい傾向にあるが、年齢だけでなく体調面も影響する。
のぼせやすい人の特徴は、基本的に熱中症になりやすい人と同じ傾向があります。年齢層でいうと、高齢者や小さな子どもは体温調節の機能が十分ではなく、のぼせやすいといえるでしょう。
また、体調面でいうと、食事を抜いていたり、十分な睡眠がとれていなかったりと、身体が少し弱っている状態の人ものぼせやすいです。過度な飲酒や朝食抜きなどの生活習慣も、のぼせやすさに影響を与えるので注意しましょう。
A.夏場に起きやすいと考えられがちだが、冬場でも起こりうるため、季節を問わず対策が必要。
お風呂での「のぼせ」は、熱中症のリスクが高まる夏に起こりやすいと思われがちですが、冬でも起こる可能性があります。寒い冬は、むしろ「しっかり温まりたい」ということから、お湯の温度を高くしたり、長時間湯船に浸かる傾向があるので、のぼせのリスクが増加してしまう場合も。どの季節でも、適切な温度と入浴時間を守ることが、のぼせ防止の基本です。
A.入浴時間に気をつけ、長時間入りすぎてしまわないよう注意しよう。
サウナや銭湯、温泉で湯船に浸かるときは、入浴時間をしっかり管理するようにしてください。自宅より温度が高いことが多く、温泉の場合は成分の影響で身体が通常よりも早く温まることがあります。「せっかく来たから」と長時間入ってしまう傾向にありますが、これがのぼせの原因につながってしまいます。また、長時間入りすぎると、かえって身体が疲れてしまい、せっかくの疲労回復やリラックス効果が得られません。汗が出始めたタイミングを目安にして、湯船から出るようにしましょう。