平成27年 3月 11日更新
◆食品安全委員会の最新の審議状況
(本ページの内容は、公開されている会合を傍聴し、花王がまとめたものです。)
6月3日に開催されました第334回食品安全委員会会合におきまして、厚生労働省より、高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性について、食品安全委員会に報告がありました。
報告された内容は、弊社より5月31日付けで、厚生労働省に提出いたしましたグリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールの遺伝毒性試験に関する試験の結果、および、国立医薬品食品衛生研究所で実施され、とりまとめられた食用油等に含まれるグリシドール脂肪酸エステルの含有量の実態調査の結果についてです。
今後、然るべき委員会において、審議が行なわれる予定です。(議事録は食品安全委員会のホームページで後日公開されます。)
消費者庁より、エコナクッキングオイル他9品目の表示許可の再審査に関して食品安全委員会に意見を求めたことおよびその取り下げの経緯(「食品健康影響評価について」及び「食品健康影響評価について意見を求めたことの取下げについて」)について説明がありました。食品安全委員会としては、引き続き「高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性について」、その不純物であるグリシドール脂肪酸エステルの安全性も含めて厚生労働省に依頼している追加資料が提出され次第速やかに、これまで得られている科学的知見と合わせて、調査審議を行っていくこととされました。また引き続き科学的根拠に基づいて事業者、消費者のどちらにも偏ることなく客観的で中立公正的な立場から国民の皆様の不安や関心に関してわかりやすく工夫しながら答えていきたいと述べられました。
座長に中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長が選出され、事務局、厚生労働省より高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性について、これまでの経緯や安全性試験結果が説明されました。その後、第4回会合以降に報告された新たな試験結果とその内容について、国立がんセンター研究所の若林敬二所長、国立医薬品食品衛生研究所病理部の西川秋佳部長、名古屋市立大学大学院医学系研究科の津田洋幸教授から説明がありました。それらを受けて、専門委員の間で総合的な議論がなされて、その結果ワーキンググループとしては「適切に摂取される限りにおいては、安全性に問題はないと判断したい。」と結論づけられました。今後の進め方については、今回の議論を元に評価の報告書を作成し、新開発食品専門調査会、添加物専門調査会へ報告、審議した後、食品安全委員会へ報告し、ホームページ等を通じで広く意見等の募集を行うことになりました。
参考人として国立がんセンター研究所・若林敬二副所長から、現在同研究所で独自に行っている実験の経過 報告(実験開始後20週時点)が行われました。この実験は、今回のジアシルグリセロールの発がんプロモーション 作用が懸念される発端となったPKC*1活性に関わる実験で、若林先生は、「まだ途中経過であり、病理的所見も ないが、肉眼的所見では発がんプロモーション活性は弱いと感じる」と述べられました。委員からは「この実験を 踏まえた限りではDAGの発がんプロモーション作用の可能性は低いのでは」との発言がなされた一方で、「この 実験からだけで実際にプロモーション作用がないとするのはどうか」という意見もでました。
その他、前回の会合で挙がった疑問点などに対する補足説明が行われました。
今回の会合により、委員からは「議論は出尽くした」との意見が述べられ、今回報告された実験と厚生労働省 が行っている追加試験の結果を待って、DAGのリスク評価に関する報告書を作成していく方針となりました。
第1回・第2回の議論を受けて、論点の整理がされました。ジアシルグリセロール(DAG)には構造から「1,2-DAG」や「1,3-D AG」の種類があって、それぞれ性質が異なり、またオリーブオイルなどにも含まれているため、リスク評価対象の定 義について改めて検討しました。その結果、高濃度にジアシルグリセロールを含む食品を評価対象としていく方向性が示され ました。また、厚生労働省より、DAGの舌発がんプロモーション作用の追加試験のプロトコルについて、評価を 行うきっかけとなった遺伝子組み換えラット*2を使った試験とほぼ同じ方法により、その再現性を確認することに加え、野生種 ラットを用いた試験も行うと報告されました。
今回は、大阪大学・高井義美教授による「ジアシルグリセロール(DAG)のPKC*1活性に関する回答」の資料紹介と、NPO法人食品保健 科学情報交流協議会・林裕造理事長から評価に当たってのポイントについて、専門家としての意見を発表され ました。林先生はDAGについて、「発がん性試験が陰性であることなどから、発がんリスクにつながらないと考え るのが普通。ただし、これだけでプロモーターであることを否定してはならない。発がんプロモーターで知ら れているホルボールエステル(TPA)*3とDAGを比較する必要性がある」と述べられました。また、林先生は、遺伝子組み換えラット*2を用い た試験に関して「仮説の検証として、こういう作用がありえるという方向性を決める試験である」と位置づけました。
議事『「アカネ色素」等に関する研究状況について(中間報告)』の中で、「ジアシルグリセロール(DAG)に関する研究状況について」厚生労働省から食品安全委員会に報告されました。これは、平成15年6月薬事・食品衛生審議会新開発食品調査部会報告において、「念のために、より感度の高いラット等を用いた二段階試験を追加的に行う」とされた件についてのその後の研究状況に関する中間報告です。この中で、遺伝子組み換えラットを用いた二段階発がん試験でプロモーション作用が一部示唆されたが、研究者の「健康危険情報は結論しえない。確認のための追加実験が望まれる」という考察を踏まえて、再現性や閾値を調べる目的で、追加試験実施の準備に入っていることが厚生労働省から述べられました。これに対し、食品安全委員会は、発がんプロモーターとして知られているホルボールエステル(TPA)*3と比較する必要性から、「マウスでの皮膚二段階発がん試験を是非やっていただきたい」との意見が出されました。
薬事・食品衛生審議会から厚生労働大臣への特定保健用食品の安全性及び効果についての答申において、「エコナマヨネーズタイプについては、安全性の問題について、慎重な審議を求める趣旨の要望書が寄せられており、関与成分中の1-2ジアシルグリセロールが大腸がんポリープに選択的に選択的に刺激するという懸念や発がんプロモーション作用等について、参考人を招く等により慎重に審議を行い、その安全性及び効果につき審査を行った結果、特定保健用食品として認めることとして差し支えないと判断された。なお、エコナマヨネーズタイプについては、「ラットを用いた混餌投与による2年間がん原性試験報告書」等の提出された試験成績からみて、発がん性を示す所見は認められず、インビボ(生体内)の試験で、エコナに使用されている1-2ジアシルグリセロールがPKC活性の亢進に基づいたプロモーション作用を引き起こすとの報告もないが、念のために、プロモーション作用を観察するため、より感度の高いラット等を用いた二段階試験を行うこととし、上記試験の結果を新開発食品調査部会に後日報告することとされた。」と報告されました。
この答申を受けて、食品安全委員会では、「エコナマヨネーズタイプに関しましては、薬事・食品衛生審議会での特定保健用食品としての安全性の審査の結果について、当委員会としても妥当と考える。ただし、1,2-ジアシルグリセロールがインビボ(生体内)でプロモーション作用を示すかどうか、念のための試験を行うように求められておりますが、この結果は直ちに当委員会にも報告されたい。」と回答されました。