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グリシドール脂肪酸エステルの安全性議論の経緯

 ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)中に、一般の食用油と比べて含量が多いことが分かったグリシドール脂肪酸エステルは、定量的な測定法がなく、そのものの毒性は知られていませんが、国際がん研究機関(IARC)において「ヒトに対して恐らく発がん性がある」とハザード評価されているグリシドールに変わるかもしれないことから、安全性に対する議論が現在も継続中です。
 グリシドール脂肪酸エステルは、ドイツにおいて乳児用粉ミルクに含まれる化学物質として低減対策の必要性を提唱した3-MCPD脂肪酸エステルの測定に誤差を与える成分として発見されました。
 以下に安全性議論として展開された、3-MCPDの経緯、3-MCPDに脂肪酸がエステル結合した3-MCPD脂肪酸エステルの経緯、グリシドール脂肪酸エステルの経緯を説明し、ジアシルグリセロール油(エコナクッキングオイル)の製造・販売中止および特定保健用食品の失効届け書を提出した経緯も合わせて説明します。

3-MCPD(3-モノクロロプロパンジオール)、3-MCPD(3-モノクロロプロパンジオール)脂肪酸エステルについては用語説明へ

3-MCPDの安全性議論の経緯

1970年代後半~1990年代前半 調味料の一部にタンパク質を酸加水分解する過程で3-MCPDが生成することがわかりました。このため、国内外の関連する食品企業では、3-MCPDを低減する取組が行われています。
2001年 国連食糧農業機関(FAO)および世界保健機構(WHO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)は3-MCPDを非遺伝毒性発がん物質として分類しました。暫定最大一日耐容摂取量を体重1kg当たり2μgとしました。
2003年 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)はパンに含まれる3-MCPDのリスク評価を公表しました。
2006年 欧州委員会(EC)はJECFAの3-MCPDの低減提案に合意しました。

3-MCPD脂肪酸エステルの安全性議論の経緯

2007年 BfRは、幼児用ミルクから高濃度の3-MCPD脂肪酸エステルを検出したことから、リスク評価を開始しました。
シュトゥットガルト化学獣医学検査局(CVUA)は油脂および油脂加工品に3-MCPD脂肪酸エステルが含まれていることを報告しました。
2008年 ドイツ連邦食糧農業消費者保護省(BMELV)は、国立研究機関Max Rubner-Institut (MRI)に3-MCPD脂肪酸エステルに関する研究を依頼し、CODEXに状況を報告し、関連あるEC組織に状況を報告しました。
CVUAとMRIは第1回目の3-MCPD脂肪酸エステルに関する分析試験を開始しました。
2009年 欧州国際生命科学機構(ILSI Europe)、EC、欧州食品安全機関(EFSA)が3-MCPD脂肪酸エステルの研究を開始し、CVUAとMRIは第2回目の3-MCPD脂肪酸エステルに関する分析試験を開始しました。
2009年2月 ILSI Europeの3-MCPD脂肪酸エステルのワークショップにおいて“パーム油と並んで高濃度ジアシルグリセロール油には3-MCPD脂肪酸エステルが一般の油に比べ多い”との報告がありました。

グリシドール脂肪酸エステルの安全性議論の経緯

2009年3月 BfRがグリシドール脂肪酸エステルに関して“シュトゥットガルト化学獣医学検査局(CVUA)が、パーム油ベースの精製植物油脂からグリシドール脂肪酸エステルを検出した”とドイツ国内に向けて、初回推定値を公表しました。
2009年6月9日 厚生労働省から花王にエコナクッキングオイルに3-MCPD脂肪酸エステルが含有するかどうかの問い合わせがありました。
6月11日 花王では燃焼イオンクロマト法および蛍光X線法で塩素が存在しないことを確認し、エコナクッキングオイルに3-MCPD脂肪酸エステルは、含まれないことを厚生労働省に報告しました。
6月12日 ヨーロッパでは高濃度ジアシルグリセロール中の3-MCPD脂肪酸エステルが検出されたことから、グリシドールおよびグリシドール脂肪酸エステルの分析を花王で開始しました。
6月16日 花王は、グリシドール脂肪酸エステルの暫定分析法を作成し、エコナクッキングオイル中にグリシドール脂肪酸エステルが含まれることを見出し、厚生労働省に報告しました。
6月29日 花王は厚生労働省に、エコナクッキングオイルに含まれるグリシドール脂肪酸エステルを確認したことと、グリシドール脂肪酸エステルの安全情報および低減策の方向性を報告しました。
7月22日 内閣府食品安全委員会 第61回新開発食品・第74回添加物合同専門調査会にて厚生労働省よりエコナクッキングオイルにグリシドール脂肪酸エステルが含有することの報告と資料の提供がありました。
8月24日 内閣府食品安全委員会 第62回新開発食品・第75回添加物合同専門調査会にてグリシドール脂肪酸エステルに関する厚生労働省からの追加提出資料に対する審議があり、厚生労働省はグリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールの毒性に関する情報を収集し食品安全委員会に順次報告することを決定しました。
9月2日 内閣府食品安全委員会 第63回新開発食品・第76回添加物合同専門調査会にてグリシドール脂肪酸エステルに関する議論があり、その中でエコナクッキングオイルの精製工程において発生するグリシドール脂肪酸エステルを食用油並に低減させる方策の検討を進め、企業に対する必要な指導を行うべきとの意見が出ました。
9月8日 厚生労働省から花王に対して「食品健康影響評価に関わる補足資料の提出依頼について」文書が届けられ、グリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールの情報収集、体内動態、遺伝毒性の3項目など、計12項目について平成22年8月末までに報告することとの指示がありました。
9月16日 花王は、エコナクッキングオイルおよびエコナ関連商品の一時販売自粛と出荷停止するリリースを出しました。
9月17日 第302回食品安全委員会において、厚生労働省食品安全部基準審課長から、(1)グリシドール脂肪酸エステルの含量を一般食用油と同等のレベルに低減させるまで一時販売自粛、出荷停止する、(2)グリシドール脂肪酸エステルの体内動態の解明に必要な3項目の試験の最終報告を11月末までに提出する予定である、とする花王からの報告について説明しました。
10月1日 エコナ関連製品に関する関係省庁等担当課長会議(消費者庁、消費者委員会事務局、厚生労働省、内閣府食品安全委員会)が開催されました。
10月6日 消費者庁「食品SOS対応プロジェクト」が花王および内閣府食品安全委員会にヒアリングを行いました。
10月8日 花王がエコナ関連製品の特定保健用食品の表示許可の失効届け書を提出しました。
11月30日 花王から厚生労働省医薬品食品局食品安全部基準審査課長宛にグリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールに関する補足資料の提出として、(1) グリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールの毒性に関する情報収集、(2)グリシドール脂肪酸エステルを経口摂取した場合の体内動態試験、(3)グリシドール脂肪酸エステルおよびグリシドールの遺伝毒性試験、に関する報告を行いました。このうち(2)と(3)は結果の提出に時間を要することを報告しました。
2010年5月18日 厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会にて「食用油等のグリシドール脂肪酸エステルの含有実態調査結果について」の報告事項があり、国立医薬品食品衛生研究所食品部が実施した食用油等のグリシドール脂肪酸エステル含有実態調査が報告されました。
6月2日 厚生労働省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会にて「高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の食品影響評価に係わる補足資料の提出について」の報告事項があり、花王から提供されたグリシドール脂肪酸エステルとグリシドールの遺伝毒性試験の結果と、国立医薬品食品衛生研究所による食用油等のグリシドール脂肪酸エステル含有実態調査が報告されました。
6月3日 第334回食品安全委員会において、厚生労働省から、花王から提供されたグリシドール脂肪酸エステルとグリシドールの遺伝毒性試験の結果と、国立医薬品食品衛生研究所による食用油等のグリシドール脂肪酸エステル含有実態調査の報告が行われ、食品安全委員会において審議の進め方を検討するとされました。
6月10日 第335回食品安全委員会において「高濃度にジアシルグリセロールを含む食品の安全性」に関する食品健康影響評価に係るワーキンググループの設置について人選の案が提出されました。
8月26日 第345回食品安全委員会において「食品健康影響評価に係わる補足資料の提出依頼について」体内動態に関連した報告がありました。
10月15日 第1回 高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、最初に議論の進め方について、グリシドール脂肪酸エステルの安全性の議論を先行し、その結果を踏まえジアシルグリセロールの評価の議論を行うことが合意されました。
11月19日 第2回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、新たなサルのデータとヒトのヘモグロビンアダクトに関するデータが示されました。
12月27日 第3回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、評価書案が示されましたが結論には至りませんでした。
2011年2月28日 第4回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、評価書案について引き続き審議が行なわれ、「毒性のまとめ」や「油脂類からの一日の摂取量の推計」等の内容について、議論がなされましたが、結論には至りませんでした。
2012年8月9日 第5回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、評価案について引き続き審議がなされました。1日摂取量の推計とリスク評価の試算が示されましたが、結論には至りませんでした。
2013年3月28日 食品安全委員会 食品健康影響評価技術研究 グリシドール脂肪酸エステルおよび3-MCPD脂肪酸エステルの安全性評価に関する研究(研究課題番号1006)の研究成果報告書が提出されました。
2014年7月7日 第6回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、評価案について審議がなされました。2009年9月に製造販売が中止された高濃度にDAGを含む食品について、さらなるデータの入手は不可能とし、今回の食品影響評価にあたり提示されたDAGに係る発がん試験の結果、並びに2013年3月までに実施された食品研究影響評価技術研究の結果、及びグリシドール脂肪酸エステルの食品中の含有実態調査などをグリシドール脂肪酸エステルに関する知見としてとりまとめる旨が記載されました。
2014年12月17日 第7回高濃度にジアシルグリセロールを含む食品に関する食品安全委員会ワーキンググループが開催され、健康影響評価書の最終的な取りまとめがおこなわれました。評価書(案)の文言等の修正後、食品安全委員会へ報告することになっております。
(議事録は、食品安全委員会のホームページで後日公開されます。当日の配布資料はこちら)
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20141217so1
2015年3月10日 第552回食品安全委員会が開催され、平成17年9月に厚生労働大臣から諮問された高濃度にジアシルグリセロールグリセロールを含む食品についての評価結果がとりまとめられました。
評価書(最終)および関連文書は、食品安全委員会のホームページで確認することができます。
http://www.fsc.go.jp/sonota/dag/dag_index.html

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