飼い主の自覚で、多くのペットトラブルは防げる
猫の飼い主には2つの責任があります。1つは、猫が健康で幸せに暮らしていけるように、愛情をもって一生大切に世話をするという愛猫に対する責任。そして、もう1つは、周囲に迷惑をかけないという、社会に対する責任です。猫の習性、行動などをしっかり理解し、正しいしつけを行って暮らすことは、飼い主の社会的責務。それがきちんとできていないと、思わぬペットトラブルに巻き込まれることもあります。
ペットトラブルを防ぐためには、近隣に迷惑をかけないことが大前提です。ペットが好きな人もいれば苦手な人もいるということを理解し、お互いの立場、考え方、ライフスタイルを認め合うことが、トラブルを防ぐ第一歩です。また、近隣とのコミュニケーション不足がトラブルをさらに深刻にします。愛猫と楽しく暮らしていくためにも、普段からの近所づき合いを大切にしましょう。
外出自由な生活が、トラブルの元になることも
猫でよく聞かれる近隣トラブルは、外出自由にしている猫が、よその花壇に排泄したり、車のボンネットに乗って傷つけたり、といった問題です。このようなケースでは、実際に迷惑をかけたのがどこの猫かをはっきりさせるのが難しいため、思わぬ濡れ衣を着せられたり、逆に、本当は愛猫が迷惑をかけているのに飼い主が気づかなかったりします。問題が表面化しにくいだけに、隣近所とのわだかまりも内向していく傾向があり、お互いに不満を抱えながらこじれてしまうことも少なくありません。
このような、トラブルの一番の解決策は、室内飼育の実践です。きちんと室内飼育していれば、猫にまつわる近隣トラブルは、ほとんど起こることはありません。「猫を家の中だけで飼うのは、猫の自由を奪ってかわいそう」という人もいますが、子猫の頃から外に出さなければ、室内飼育でも猫はそれほど大きなストレスを感じることなく暮らせます。
自由に外出している猫は、交通事故や猫エイズなどの怖い病気にかかる危険と常に隣り合わせ。それだけでなく、猫を快く思っていない人から、思わぬ虐待を受けることだってあるのです。
現代社会に生きる猫の飼い主には、近隣トラブルの防止と、猫の健康と安全のため、室内飼育をおすすめします。
「多頭飼育」も限度を超えればトラブルに
多頭飼育をしている猫の飼い主はたくさんおられます。個性の違った猫がいる暮らしは楽しいもので、多頭飼育そのものは悪いことではありません。しかし、その頭数も度を超えればトラブルの元。捨て猫や野良猫を見捨てておけず、気がつけば自分で世話をしきれないくらいに数が増えてしまう場合もあります。そうすると、1頭1頭に目が行き届かなくなり、周囲の家への猫の出入り、排泄、悪臭、不衛生などで迷惑をかけることになります。また、「あの家は猫好き」という噂が広がると、家の前に捨て猫を置き去りにされることも、よく起こっています。
周辺に迷惑をかけず、それぞれの猫が健康で安全な生活を送れるように世話をするとなれば、1軒で飼える頭数には限度があるのです。情にほだされることなく、冷静に考えることも必要です。
「野良猫対策」を考える
ゴミをあさる、庭で排泄をする、公園の砂場でウンチをするなど、野良猫のトラブルも相変わらず起こっています。と同時に、かわいそうだからと野良猫にエサを与える行為がトラブルになることもあります。本人はよかれと思ってやっていても、ただエサを与えるだけでは野良猫をますます増やしてしまうだけで、よい解決策とは言えません。中には、夜中にこっそりエサだけ与えて、食べ残しの片づけさえしない人もいます。これではトラブルになってもしかたありません。
だからといって、単純に猫を捕まえて処分すればよいというわけでもありません。近年では、「地域猫」という取り組みも行われるようになってきました。これは、地域ボランティアが野良猫にエサを与える代わりに、これ以上増えないように不妊・去勢手術もきちんと行い、責任をもって適切な飼育・管理をして責任の所在を明らかにすることで、地域住民の理解と協力を得ながら結果としてその地域の野良猫を減らしていこうという試みです。
とにかく、一番のトラブルの原因は、野良猫に中途半端に関わることです。エサを与えた時点で、その猫に対するある程度の責任も発生します。責任はとれないので、夜中にこっそりエサを与えるというスタンスで関わっていては、野良猫を助けるどころか、風当たりは強くなるばかりです。
「ペット飼育禁止」マンションでのトラブル
最近は、ペットも家族の一員であるという認識が、徐々に社会に浸透し、ペット飼育可マンションがだいぶ増えてきました。平成15年7月に行われた『動物愛護に関する世論調査』でも、約6割の人が「一定のルールを守れば飼ってもよいと思う」と回答しています。とはいえ、まだまだペット飼育を禁止しているマンションが多いのも事実です。
管理規約に「ペット飼育禁止」とあれば、飼育を求めて裁判で争っても、これまで一度も「飼育可能」の判決が出たことはありません。結局は裁判に負け、愛猫を手放すか、愛猫を連れてマンションを出ざるを得なくなります。契約前に規約(販売員の言葉より、規約を信用してください)を確認し、「ペット飼育禁止」なら、入居か飼育をあきらめ、ペット飼育可能なところを探すのが得策といえます。
しかし、中には、管理規約で禁止されていても、マンション内の飼い主たちが団結して「ペットの会」を設け、ルールを作ってモラルの向上を図り、ペット飼育を容認してもらえるように働きかけをして、円満に解決しているマンションもあります。
なお、ペット飼育可能だからといってそれで問題が解決するわけではありません。しつけと世話がきちんとできて、近隣に迷惑をかけないということが大前提。「飼育可能」という条件に甘えて不適切な飼い方をしていれば、再び「やっぱりマンションではペットは飼うべきでない」という方向へ逆行する可能性のあることを忘れてはなりません。
監修:ペット法学者・帯広畜産大学教授 吉田眞澄先生