ニャンとも清潔トイレ
開発ストーリー

製品開発編

「リビングに置ける猫のトイレ」誕生の背景

猫の飼育方法の変化に伴い“猫トイレの役割も変わるべき”という発想から

昨今のペットブームのなかで、家族の一員として室内で暮らす犬や猫が急増。また、「感染症予防」「近所への糞害などの迷惑防止」などの理由から、猫の完全室内飼育化が急速に進みました。散歩やしつけのいらない猫は飼いやすさで人気がでる反面、猫と飼い主との距離が近づいたことで、新たな悩みも出てきました。

なかでもダントツに多いのがトイレに関する悩みです。「砂が部屋中に飛び散る」「外出から帰りドアを開けたら猫のトイレのニオイがする」「仕事から帰って、猫のトイレ掃除をするのが憂鬱」…など。猫のオシッコは、犬に比べて濃くニオイも強烈。しかも、猫はキレイ好きで、汚れたトイレだと嫌がって粗相をしてしまうケースも。猫と暮らすライフスタイルにおいて、「猫トイレ」のお悩みは、飼い主さんにとって半ばあきらめに近い状態だったようです。

花王ペットケアチームは、そんな問題を解決すべく、猫のトイレ開発に着手。そして生まれたのが『ニャンとも清潔トイレ』でした。

旧デザイン「ニャンとも清潔トイレ」

猫トイレの概念を取り払う今までにない「システム構造」を開発

ペットケアチームの課題は、「飼い主さんの負担軽減」はもちろんのこと、「猫にとっても快適なトイレ」の実現でした。
製品開発がスタートした1999年当時、猫のトイレといえば「固まるタイプの猫砂」が主流でしたが、猫を飼っていた製品開発担当者が発した「砂は固まらなきゃいけないのかなぁ?」という一言。この常識を覆す逆転の発想が『ニャンとも清潔トイレ』開発の引金になりました。
 
そこで様々なアイディアを重ね、ついにトイレを二重構造にし、チップを通過したオシッコを下段のマットで瞬間吸収させる、という画期的な仕組みを考えだしたのです。再・未利用材である針葉樹の廃材・間伐材を利用したチップ・マットを使用することで、環境にもやさしく、使用する猫にも安心。 
 
「取り替えなしで1週間臭わない*」「砂が飛び散らず床を汚さない」飼い主さんを満足させる夢のトイレは、多くの困難を乗り越え2001年に製品化。以来、大ヒット製品となりました。
 
*●マット・チップによる不快な尿臭の脱臭効果(愛猫1頭に使用する場合)。 ●ウンチをした時は早く取り除いてください。

「猫との暮らしが変わった!」というお客様からの喜びの声が、何よりの成果

かけがえのない家族である愛猫に、ストレスなく、ずっと元気でいてほしい。飼い主さんに、愛猫と一緒に暮らせる喜びをもっと感じてほしい。そんな願いから開発され、多くの飼い主さんの支持を得た『ニャンとも清潔トイレ』。開発スタッフの喜びは、何よりも飼い主さんからいただいた多くの声でした。
「ニャンとものおかげで、猫との暮らしが変わりました!」
「トイレのお手入れ時間が減ったお蔭で、猫たちと遊ぶ時間ができました」
「お客さんが遊びに来た時、『あれ?猫いなくなったの?』と言われて…」等など。
寄せられる感謝の声が、何よりの財産であり励ましに。愛猫との暮らしが近くなったからこそのお悩みに耳を傾け、試行錯誤を重ねる日々はまだまだ続きます。

お客様からの要望を受け、「ニャンとも」は絶えず進化し続けます

『ニャンとも清潔トイレ』は、2001年の発売以来、グループインタビューや市場調査などで絶えず生活者の声を聴き、飼い主さん(消費者)からの意見を積極的に取り入れ、改良を重ねてきました。しかし、一貫して変わらないのが、針葉樹のチップとマットを使った二層式のシステム。この常識にとらわれない発想とチャレンジこそが、画期的な猫トイレを生み出すことになったのです。 
 
従来の猫トイレは廊下・玄関・浴室など、極力、汚れてもいい場所、目立たない場所に設置する傾向にありましたが、「臭わない」「飛び散らない」という課題をクリアしたからこそ、住まいの中心であるリビングにも置けるようになりました。
 
その後も、より使いやすく「引き出し式」を採用、お部屋の雰囲気に合わせてカラーバリエーションを展開。飼い主さん、猫の好みに合わせて使い分けられるよう、チップに「小さめの粒」が登場、「ウンチのニオイも臭わない」パワーアップ脱臭など、様々な改良を進めました。
飼い主さんからのご要望がある限り、ニャンともの改良点はある。これからも『ニャンとも清潔トイレ』は積極的に改良を続け、お客様にご提案し続けます。 
※2009年発売の旧タイプ商品開発時の開発ストーリーです。

デザイン開発編

リビングトイレという進化を、機能とデザインの両立により実現

著名デザイナーとのコラボレーションにより、ワンランク上の「猫トイレ」を開発

2008年、『ニャンとも清潔トイレ』に新たなプロジェクトが立ち上がりました。
よりスタイリッシュなデザイン性を追求し、外部デザイナーとのコラボレーションを展開するためです。
「オシッコもウンチも臭わない」「砂が飛び散らない」を実現し、お部屋の中に置いても気にならない、愛猫と暮らすライフスタイルにぴったりマッチした『ニャンとも清潔トイレ』。その更なる進化版として、住まいの中心である「リビングの真ん中にでも置ける」ワンランク上のデザイン性を求めたのです。
 
その大役を任せられたのが、インダストリアルデザイナーの柴田文江さん。グッドデザイン賞など多数受賞し、多方面で活躍する柴田さんは、女性らしい感性を大切にし、使う人の立場に立った繊細なモノづくりを得意とする、今もっとも注目されるインダストリアルデザイナーのひとりです。
「人が使うもの」を題材にしてきた柴田さんにとって、「猫が使用するトイレ」は新鮮なチャレンジだったとのこと。デザイン開発に至るその思いを伺いました。

今回「ニャンとも清潔トイレ」のデザインを手掛けたインダストリアルデザイナー・柴田文江さん

テクノロジーが本物であるからこそ、デザインのチカラで応援する気持ちで

「リビングトイレ」という、新コンセプトを形に。

-今回、『ニャンとも』のデザイン・リニューアルの依頼を、どのような気持ちで受けられたのですか?

今まであまり注目されていなかった猫のトイレを、デザインによって新しい価値を再認識してもらうような仕事だったので、面白いと思いました。現代の猫ちゃんは、家族の一員のように家の中で一緒に暮らしている。その暮らしの中心であるリビングで使えるトイレ。「リビングトイレ」というコンセプトはとてもしっくりきました。
 
リビングって食事をするところだから、そこにトイレを置くというのは、普通に考えれば難しい設定ですよね。その矛盾を、「ニオわない」「汚れない」というテクノロジーが関与することでクリアできた。「リビングトイレ」ってすごい!と。しっかりしたテクノロジーとこれまで培ってきた信頼性のある商品なので、あとはデザインが応援してあげればいいだけだったんですね。
 
「これならリビングにも置ける」「そういう生活スタイルもあるな」など、飼い主さんにそんな気づきを与えて、使うハードルを低くしてあげる。それがデザインの役割というか、チカラだと考えました。

猫を飼う楽しみ、喜びを感じている方に、より豊かな共生スタイルをご提案

生活スタイルに応じて選べる、4つの新たなデザイン。

-今までの猫トイレのイメージにはないスタイリッシュさを感じます。デザインの方向性は?

私の仕事は、人間の身体に近いものをデザインすることが多いんです。例えば、手に持つとか、身体に触れるとか。その場合、人間のからだってどこにも直線がないので、それに触れるモノの合理的な形を探していくと、どうしても自然な曲線に近くなる。
今回は、実際に使うのは猫ちゃんで、猫のからだに触れるものだったので、丸くやさしい曲面を使ったほうがよいだろうと考えました。それと、飼い主さんは猫と暮らす楽しみ、喜びを味わっているわけでしょ? だから、猫のしなやかさ、まとわりつく可愛さ、愛猫と戯れる安らぎのような感じをプロダクト(製品)でも出したかったんです。
 
あとはインテリアの中でどう見えるか、というポイント。結構大きなものなので、あまりフラットな面や直線的なものが際立つと、逆に目立ってしまう。置いた時に周りの空気となじみがいいもの、自然な流れを生むフォルムを意識しました。それと、先程申し上げた猫のからだとか猫を飼う雰囲気みたいなものを考え合わせると、必然的にこのデザインになったという感じです。

細部にわたるこだわりが、本物の機能美を生み出すことに

使い手である猫ちゃん、そして飼い主さんのために細部にわたり工夫されたデザイン。

-特に、こだわられた部分について教えてください。

全体のフォルムとしては、カバーを付けた「ドームタイプ」で、猫をイメージさせるやわらかな雰囲気を保てるかということ。そして、上部をカットした「ハーフカバー」でも、そのイメージが崩れないかということを大事にしました。カラーリングは、『ニャンとも』のキーカラーであるオレンジ色を、今回もこだわって使いました。これまで培ってきた信頼性があるので、そのイメージを引き継ぎたかったから。もう一つは、インテリアの方向性で、明るいナチュラル系のお部屋もあれば、重厚な木目調のモダンなお部屋もあるので、オシャレで女性が好む茶系のものもつくりました。

プラスチックは安っぽいお手軽素材と思われがちですが、ディテールにこだわり、付属品にもこだわっていくことで、プラスチックにしかできない美しい表現も生まれてきます。デザインのチカラで、美しさに変えていければと考えました。例えば、入り口部分の曲面も、猫が出入りする際に、毛が挟まるんじゃないかと飼い主さんはきっと心配する。そういった心理的な不安をとりのぞいてあげるために、やわらかい形にしています。
ドームタイプのカバーも、かぶせた繋ぎ目に凸凹感の無い仕上げにこだわりました。一体感をもたせて、ラインのやわらかさを壊さないようにしています。 
 
上にある穴も、「空気穴」として開けなければいけないという条件がありました。プラスチックは穴の開け方によっては安っぽくなってしまうんですが、切り口を回り込ませることで肉厚にみせ、豊かな質感のある表現に仕上げることができました。逆転の発想で、不利な条件を克服することで、逆にデザインの密度が上がっていくんですね。

中側のスノコ部分も、尿がちゃんとマットに落ちるように、やわらかさを保ちながら、下に流れるような形状を模索しました。機能的な部分はぜったい犠牲にできませんから。針葉樹でできたマットに仕事をいっぱいさせるために、ギリギリまでスノコ面をもってくる、ということを一番に考えました。

スコップは、どの角度からも美しく見えるように気を配りました。プラスチックという素材の「本物感」をデザインのチカラで作っていく。そうすれば、部屋の中に木の机があったり、石の置物があっても、それらと何の遜色もなく存在しえるだろうと。 
 
リビングに置けるというファッショナブル(情緒的)な要求を満たしつつ、機能的なことはフルに消化しなければいけない。非常にロジカルなものを処理して、かわいいもの、美しいものへと変換していくのが、プロダクトデザインの仕事なんですね。今回、テクノロジーのしっかりした、システムトイレのパイオニアである花王の製品でコラボできたことは、すごくやりがいもあるし良いお仕事でした。

チームワークの良さで乗り越えたクオリティ。皆の想いを集結させたデザインに

-今回のプロジェクトに参加されてのご感想は?

今回、最初にお話を伺った時点から、熱い感じで(笑)。企業としての本気度、覚悟がひしひしと伝わってきたので、その雰囲気に乗りながらやり切れたという感じです。

製品づくりは基本的にチームワークですので、プロジェクトの中では自分も花王のメンバーになってやっていきます。企画の人、つくる人、売る人など、様々な立場の方々からいろんな意見が出てきて、それらをブレンドすることで良いものができていく。そういう例だったかなと思います。本当に世の中にないものを作るときは、開発過程で、いろんな人の意見を取り入れながら成熟させていくことが大事なんですね。そして最後に、その企業が「こういう物を作っています」という精神を伝えていく。デザインも技術もそれぞれがひとつのツールですから、それらが一体となって、企業の精神がお客様に伝わればいいですね。

この『ニャンとも清潔トイレ』は、見た目はかわいらしいんですけど、実はすごく硬派に作られたものなんですよ(笑)。この高い水準で作られた製品が、多くの家庭で猫ちゃんと飼い主さんの快適さを育むことになれば本当に嬉しいです。

共同開発メンバー

インダストリアルデザイナー
柴田文江さん Fumie Shibata
 
日用雑貨から家電まで、幅広く活躍中。グッドデザイン賞をはじめ、国内外のデザイン賞を受賞。 いま最も勢いのあるインダストリアルデザイナーのひとり。Design Studio S 代表 2003年~ グッドデザイン賞審査委員 2007年 IFデザイン賞最高位金賞受賞 2008年 ドイツ red dot design award受賞

「ニャンとも清潔トイレ」は、2010年度グッドデザイン賞を受賞しました。
※2009年発売の旧タイプ商品開発時の開発ストーリーです。

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