達人コラム

学校法人桐蔭学園 家庭科教諭 佐藤誠紀先生
家庭科を通じて社会で生きる力を養う

2018.04.24 | 生活スタイル、働き方

【達人コラム】学校法人桐蔭学園 家庭科教諭/佐藤誠紀さん 

1993年(平成5年)に中学、1994年(平成6年)に高校で家庭科は男子生徒も学ぶようになりました(家庭科男女共修)。現在、中学校・高校の家庭科ではどのような授業が行われているのでしょうか?また、共修化によって若い世代の家事行動はどのように変わったのでしょうか?男子中学生・高校生の授業を担当している男性家庭科教師の佐藤誠紀先生にお話をうかがいました。

家庭科は「生活をつくる」教科

現在39歳の私は、男女が共に学ぶ家庭科になった年に高校1年生で、男女共修の最初の世代です。「家庭科は新しい時代をつくる教科だ」と興味を持ち教師になりました。しかし残念ながら、男性家庭科教師は今でも少数派です。
 
家庭科=料理や裁縫を習う教科という印象が強いからかもしれません。家庭科は、「家の中のこと」だけでなく、生活とそれを取り巻く社会をつなげて、今の生活の自立から将来の生活へとつなげる教科です。教師も生徒も今の生活と将来の生活を見つめる姿勢が常に問われ、一緒に「生活をつくる」教科です。

家庭科の教科書

現在の家庭科の教科書

家事のハードルを低くする

くらしの現場レポート『フォローしあって家事をシェア 暮らしをマネジメントする20~30代夫婦』では、臨機応変に家事をシェアしている様子が報告されていて、特に男性の家事能力の高さに感心しました。

でも、彼らが「家庭科共修世代」だからというよりも、結婚前や子どもが生まれるまでにどんな生活を送っていたかが大きいと思います。私と妻が一緒に暮らし始めた当初は、ひとり暮らしをしていた私のほうが実家暮らしだった妻よりも家事ができる状況でした。妻が家事能力をあげるにつれ、自然に臨機応変に二人で家事を分担するようになりました。
 
問題は大人になっても家事能力が高くないことに対して、危機意識を持っていないことです。料理など、ある程度経験をつまないとすぐにはできない家事もあります。家事シェアする家庭を増やすためには、家事のイメージを変え「自分でもできる」という家事のハードルを下げなければならないでしょう。

佐藤誠紀さん

家事イメージを変える教科として

家事イメージを変えるためには、授業で学んだことを実際にやってみることが大切です。

例えば、本校では中学校の男子生徒に「お弁当の日」を設け、年に2回、自分で作ったお弁当を持参する試みをおこなっています。生徒のお弁当は、おにぎりのみのお弁当からキャラ弁まで、自分の食べたいお弁当を楽しんで作っています。
 
料理や洗濯などは、できるのにやらないで済んでしまう家事です。お弁当の日は、料理することを楽しんで習慣化できる機会ととらえることができます。そういう意味では、家事シェアする生活を見据えて、生徒が楽しんで家事する機会を家庭科がつくっているともいえます。

家事マネージメント能力を高めて家事シェア

家事シェアをうまくおこなうには、家事マネージメント能力を高めることが重要だと思います。

例えば、家事に消極的なパートナーに「ごみ出しと皿洗いをして」と行動が限定された指示を出せば、きっと相手は良好な関係を保つために指示されたことはこなすことでしょう。ただ、それでは全体の状況を見ることなく、指示待ち状態になってしまい、指示を出すパートナーは疲れてしまいます。お互いスムーズに家事をシェアするため、家事の流れを把握し意思決定する=家事マネージメント能力が必要です。
 
私は、妻にごみをまとめて玄関に置かれたら負けと思っています(とはいえよく置かれていますが…)。ごみ出しは、ごみの日とごみ箱の状況把握が必要です。玄関に置かれたごみ袋は、家事マネージメントが出来ていない象徴に私には映ります。
 
家庭全体を見渡し問題解決に向け自分で判断し自ら行動する家事シェアは、役割やルールを作るよりもお互いが生活の流れを意識する家事マネージメント能力が必要です。

佐藤誠紀さん

将来の家族観を築くきっかけづくり

意識を変えるという点では、授業でも難しさを感じます。教える男子生徒にはどこか「家事は自分には関係ない」と思う心の壁があります。

例えば、男性は外で働き、女性は家庭を守るという「性別役割分業」を授業で取り上げ議論させると、意見は二極化します。家事に消極的な男子生徒は一定数いるのです。性別役割分業観を否定はしません。しかし、未婚男性の平均賃金と未婚女性の期待するパートナーの年収に大きな開きがあります。一人で稼ぐよりも二人に収入がある方が、家計のリスクを分散できます。そこからは、生徒が判断し決めることです。家庭科を通じて自分の理想と現実を問いかけ、時代の流れと共に自らの答えを見つけていく力を養っていってほしいと思います。

Profile

佐藤誠紀(さとうとものり)さん

学校法人桐蔭学園 家庭科教諭
佐藤誠紀(さとうとものり)先生

1978年神奈川県生まれ。高校の授業で家庭科に興味を持つ。高校家庭科男女共修、最初の世代にあたる。2008年から桐蔭学園中学校・高等学校・中等教育学校に家庭科教諭として勤務。そのかたわら、ストリートダンスコンテストで2度の全国準優勝経験を持つ。(Japan Dance Delight 13・15回大会 2nd Place Repoll:FXのメンバー)

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