達人コラム

料理研究家・栄養士・HACCPコーディネーター 若宮寿子さん
清潔なキッチンで家族の健康を守る

2017.05.23 | 生活スタイル

【達人コラム】料理研究家・栄養士・HACCPコーディネーター 若宮寿子さん

「食中毒」と聞くと、「飲食店で起こるもの」という印象が強いかもしれませんが、実は発生件数の第2位は家庭です。気温が高くなる夏場は、特に細菌が原因の食中毒が増える季節。今回は料理研究家でHACCPコーディネーターの若宮寿子さんにキッチン周りの衛生管理の方法を教えていただきました。

キッチンの衛生管理は「転ばぬ先の杖」

食中毒予防の三原則は「(菌を)付けない・増やさない・やっつける」ですが、『くらしの現場レポート:我が家の掃除は大丈夫? 「見た目キレイ」なキッチンも要注意!』を読んでみると、いつもの無意識な行動が菌を広げることにつながっている危うさを感じるものもありました。見た目の汚れを取るだけでは、キッチンの衛生管理は十分とは言えません。

私が日頃開いている料理教室は、「おいしく衛生的につくる」ことがコンセプトで、キッチンの衛生管理にはHACCP(ハサップ/ハセップ)の方式を取り入れています。HACCPとは衛生の世界基準で、食品の製造、加工のすべての工程で食中毒などの健康被害をあらかじめ分析し、危害を排除して安全を確保する衛生管理の手法です。元々は企業が導入してきたものですが、その考え方は家庭でも共通して応用できます。難しいことのように思われるかもしれませんが、いわば「転ばぬ先の杖」。つまり、正しい知識をもって衛生管理を行い、食中毒などを予防しようということです。厚生労働省も食中毒予防のために「家庭で行うHACCP」として推奨しています。

若宮寿子さん

衛生管理は買い物から始まっている

買い物に行ったとき、買う順番を意識していますか?肉や魚など傷みやすい生鮮食品は、最後に買うのが基本。購入したら、生ものは汁などが漏れないように1パックずつ個別にビニール袋に包んで保冷バッグなどに入れ、立ち話や寄り道しないで速やかに持ち帰りましょう。そして、家に帰ったらビニール袋から出さずにそのまま冷蔵庫へ。我が家の冷蔵庫を見た人は、袋から出さないなんて、ずいぶん面倒くさがりなんだと思うようですが、実はこれも冷蔵庫の中で食品同士が汚染し合わないための方法の一つなのです。冷蔵庫に入れておけば安心と過信せず、庫内で菌を広げない、増やさない工夫をすることも大切です。

調理中は生ものと道具の取り扱いを慎重に

予防三原則の「付けない」「増やさない」の基本となるのが手洗いです。手から菌を広げないように、調理前には石けんをつけて念入りに洗い、しっかりと水気を拭き取ります。手拭きは清潔なタオルか使い捨てのペーパータオルを使ってください。調理中、生肉や魚、卵を取り扱ったときにもその都度、石けんで手を洗いましょう。

加熱前の食材や調理器具の取り扱い方も重要です。まな板は肉用、魚用、野菜用に分けるのが安心。使用後のまな板や包丁は、洗剤をつけてきれいに洗い、熱湯消毒してよく乾燥させるか、台所用漂白剤で除菌します。包丁は柄の部分もしっかり洗って台所用漂白剤で除菌しましょう。

生肉や魚を切った後、まな板と包丁を洗うときにスポンジに生肉などが入り込むとそこから菌が移ることもあり、食器洗いの際に心配です。そこで私は洗剤をつけたキッチンペーパーをスポンジ代わりにして、1回の使い切りで洗っています。また、生肉はまな板いらずのキッチンばさみでカット。刃が分解できれば洗うのも簡単で、衛生面ではとっても安心です。もう一つ、私がしている裏ワザは、ハンバーグの肉だねをボウルではなく鍋で混ぜること。取り出した後に鍋に水を入れて沸騰させれば、煮沸消毒ができます!

ふきん類はつねに乾いているきれいなものを

くらしの現場レポート』で、一般のご家庭のスポンジや手拭き用タオル、台ふきんなどで菌の汚染度が高いという報告がありましたが、その通り。湿っていれば菌が繁殖しやすくなるので、スポンジは水切れの良いものを選ぶと良いでしょう。食器をせっかくきれいに洗っても、ふきんが汚染されていれば台無しです。テーブルや調理台の上も汚れた台ふきんで水拭きしていれば、きれいになるどころか菌をどんどん広げることになります。ふきん類はこまめに洗濯したものに取り替えて、乾いた状態のきれいなものを使ってください。

台所用漂白剤で徹底的に除菌

三原則の「やっつける」を実践するために、我が家で大活躍しているのが『キッチン泡ハイター』などの台所用漂白剤で、まな板、包丁、シンクなどに幅広く活用しています。ただでさえヌルヌルしがちな排水口は、洗いにくいゴムの蓋を外したところ、ごみ受けバスケットの様子がよく見えるので、少しの汚れでも気になり、毎日こまめに掃除する習慣がつきました。そのおかげで、排水口までいつもピカピカです。

キッチンの衛生管理というと難しく感じてしまうかもしれませんが、正しい知識で習慣にしてしまえばそんなに手間をかけることなく、安心してきれいな毎日を過ごすことができます。最近では、「洗剤はあまり使いたくないから水拭きが中心」という声も耳にしますが、洗剤で汚れを取ったり、アルコールスプレーを使ったりして、衛生面でもきれいにしておきましょう。

実は私も面倒くさがり。だからこそ、手間をかけずに危険を遠ざけ、簡単に衛生管理ができる方法を実践し、皆さんにもおすすめしています。家族の健康を守るために、ぜひキッチンの衛生管理を習慣化してください。

10年以上使用していても、若宮先生のキッチンのごみ受けはピカピカ。1日の終わりにごみを捨ててきれいに洗い、台所用漂白剤をスプレーして水洗い。仕上げにシンクの水気を拭き取れば、いつもこの状態に!

10年以上使用していても、若宮先生のキッチンのごみ受けはピカピカ。1日の終わりにごみを捨ててきれいに洗い、台所用漂白剤をスプレーして水洗い。仕上げにシンクの水気を拭き取れば、いつもこの状態に!

※HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品の製造・加工工程のあらゆる段階で発生するおそれのある微生物汚染等の危害をあらかじめ分析(Hazard Analysis)し、その結果に基づいて、製造工程のどの段階でどのような対策を講じればより安全な製品を得ることができるかという重要管理点(Critical Control Point)を定め、これを連続的に監視することにより製品の安全を確保する衛生管理の手法です(厚生労働省)。

Profile

料理研究家・栄養士・米国NSF HACCP9000コーディネーター 若宮寿子(わかみやひさこ)さん

料理研究家・栄養士・米国NSF HACCP9000コーディネーター
若宮寿子(わかみやひさこ)さん

栄養士、産業管理指導者、FCAJ認定フードコーディネーターなどの資格をもつ。短大卒業後、企業の栄養指導、給食管理を8年間行った後、若宮ヘルシークッキングスタジオ主宰。さまざまな企業のフードコンサルタント、メニュー提案、衛生指導などを行うほか、農水省食育レシピ監修、テレビや雑誌など各メディアへの料理紹介など、幅広く活躍している。

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