達人コラム

一般社団法人ドゥーラ協会 共同設立者/理事 丑田香澄さん
「ありのままの自分」で子育てを楽しもう

2016.05.24 | 子育て

【達人コラム】一般社団法人ドゥーラ協会 共同設立者/理事 丑田香澄さん

初めての出産・育児は、誰もが多かれ少なかれ、不安や戸惑いを抱えるものです。今回は、妊娠・出産・子育て情報の提供や、産前産後の母親とくらしを支える専門家「産後ドゥーラ」の養成などを行う一般社団法人ドゥーラ協会共同設立者で、一児の母でもある丑田香澄さんに、先輩ママとしての体験も踏まえて、子育てへの向き合い方・楽しみ方についてお話をうかがいました。

出産・育児は抱え込まずに、周りの力も上手に借りよう

くらしの現場レポート:新米ママの子育てライフ 無理をしないで私らしく向き合いたい』での新米ママたちの妊娠・出産・育児の様子は、とても興味深かったです。「母」という属性だけにとどまるのではなく、家族のためにも自分らしく生きる、「私らしさを大切にする」という価値観は私自身にも当てはまりますし、仕事の有無や年齢を問わず今どきのムーブメントなのだと改めて感じました。

昨今の社会背景から、今、子育てするママたちが孤立しやすい環境にあるのは確かです。親世代が現役で働いていたり、高齢であったり、介護を抱えていたりで頼れない。ワーキングマザーの場合、会社での人間関係は広くても、近所に知り合いがいないことも多い。私自身も、妊娠・出産の節目で会社を辞めて、育児という未知なる世界に入り込んだ時には、自分のこれから先の人生が見えづらくなって戸惑いました。そんななか育児はがんばらなくちゃと気負って、なんとなく一人で抱え込んでいたように思います。でも、出産や育児に不安や大変さはつきものだし、子育ては母親一人だけでできるものではないとわかりました。言い換えれば、一人で抱え込む必要はないということ。パートナーである夫や親、地域などの周りの力を借りればいいと、徐々に周囲から教えてもらって楽になりました。

そばにいて寄り添ってくれることの安心感

私は産後に知り合ったベテラン助産師らとともに、一般社団法人ドゥーラ協会を設立しました。ドゥーラはギリシャ語で「他の女性を支援する、経験豊かな女性」という意味。産前産後の母親に寄り添い、子育てが軌道に乗るまでの間、日常生活のサポートをする担い手で、アメリカでは一つの職業として確立されています。日本にも、お産婆さんやご近所にそういう頼れる人がいたと聞きます。

根本的な概念は、「何ができるか(Doing)・何を知っているか(Knowing)よりも、どうあるか(Being)」。家事やアドバイスといった行動や知識よりも、あなたのやり方でいいよ、あなたのこういうところがすばらしい、というように主人公であるその人(母親)本来のよさを引き出すサポートこそが重要で、何もしなくてもいるだけでいい存在、寄り添うことで安心感を与える存在なのです。この概念はドゥーラという職業に限らず、すべての人に通じるものであり、つまり夫や親など新米ママの周りにいる誰もがそうしたドゥーラ的な関わり方ができるということなのです。

丑田香澄さん

相手を信頼して思いを伝え、「委ねる」ことが大切

私が先輩ママに言われて一番心に響いたのは「委ねる(ゆだねる)」という言葉です。これは「抱え込む」の逆。一人で抱え込むと周りが見えなくなり、差し伸べられた手を受け入れられないこともありますが、最初から「委ねる」気持ちでいれば、サポートする・されるの関係もうまくいくと思います。「委ねる」ことは、ベースに相手への信頼感があってこそ成立するもので、それが素直に「ありがとう」という感謝の気持ちになって循環していきます。

また、ママたちも何をどうしてほしいのかを相手にきちんと伝えるといいですね。女性は「察する」ことが得意なので、夫や周囲にもそれを求めがちですが、言葉にしないと正確に相手に伝わらないんです。私も「これをやってくれたらうれしいな」と口に出して言うようにしたり、対話を重ねる中で、夫が保育園の送迎や皿洗いなどを率先してやってくれるようになるなど、家族の形が作られていったように思います。

そして、サポートする人たちは、ママたちの思いも尊重してほしいと思います。先日、自治体の講座で、子ども世代をどうサポートしたらよいか悩んでいる親世代(祖父母)に向けてお話しする機会がありました。その時に、娘さんたちのやり方に口出しして変えようとするのではなく、彼女たちなりに築いてきたライフスタイルや価値観を理解してほしいということをお話ししました。サポートには相手が何を望んでいるかを考え、寄り添う気持ちでそれぞれの価値観をすり合わせていくことが大切なのだと思います。

みんな違っていい!肩の力を抜いて、あなたらしい子育てを

今、いい意味でも悪い意味でも情報があふれています。出産・育児で不安なことをネットで検索すると、ネガティブな情報もたくさん出てきて、よけいに不安になったり悩んだりすることもあります。でも、子育ては思った通りにいかないことだらけ。心配事は抱え込まずに、地域にいる専門家や先輩ママに相談するなど、いい形で情報を得ることが大切です。また、外に出かけたり誰かと話したり、リアルなつながりを持つことで、扉が開くこともあります。

「先輩ママから」と偉そうに語る立場にはありませんが、お伝えできることがあるとすれば、「ありのままの自分でいい」ということ。私は今、活動と子育ての拠点を東京から故郷の秋田に移していますが、農家の方が「メロンはメロンで、スイカはスイカ。他のものに憧れたりしない」と言った言葉がすごく印象に残っています。周囲を気にしてばかりいると、比較して悩んだりしてしまう。でも、100組のママと赤ちゃんがいたら、ママも赤ちゃんの個性も百人百色。子育てのやり方も100通りで正解なんてないんです。「みんな違ってみんないい」というのは私の好きな言葉ですが、「私は私」だと肩の力を抜いて、自分らしい子育てを楽しんでください。

Profile

一般社団法人ドゥーラ協会 共同設立者/理事 丑田香澄(うしだかすみ)さん

一般社団法人ドゥーラ協会 共同設立者/理事
丑田香澄(うしだかすみ)さん

1984年東京都生まれ。秋田県秋田市育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現・日本IBM)入社。結婚・退職・出産の後、2011年4月、東京都助産師会による東日本大震災被災妊産婦支援事業「東京里帰りプロジェクト」事務局を経て、2012年3月一般社団法人ドゥーラ協会を共同で設立。2014年4月、一家で故郷秋田へUターンし、現在は、五城目町地域おこし協力隊として移住や起業の支援などを行う。

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