達人コラム

医学博士/日本大学医学部附属板橋病院泌尿器科部長 髙橋悟先生
男性の尿もれ。セルフケアで前向きに取り組みを

2015.09.08 | おとなの男性、高齢社会

【達人コラム】医学博士/日本大学医学部附属板橋病院泌尿器科部長 髙橋悟先生

男性の「尿もれ」は、女性ほどにはまだ実態が知られていないので、人知れず悩んでいる人も多いようです。けれども、40代以上の男性なら誰にでも起こりうる症状で、決して恥ずかしいことではありません。今回は、日本大学医学部附属板橋病院泌尿器科部長の髙橋悟先生に、男性の尿もれの実態や改善策についてアドバイスをいただきました。

「尿もれ」と「尿失禁」は別のもの

男性同士の会話で、「トイレが近い」ことは笑い話として出てきても、「もれる」ことが話題に上ることはまずありません。『くらしの現場レポート:50代以上男性の約3割に症状あり 認めたくない、誰にも話せない尿もれ事情』でも誰にも話せないという人がほとんどでしたが、やはり恥ずかしいという思いが強いようです。
少量の尿がもれるのは排尿後尿滴下と言われるもので、40代後半から始まる、男性に多くみられる症状の一つです。年齢とともに尿を押し出す筋肉が衰えるために排尿の勢いが弱くなって、尿道に残ったわずかな尿が後から出てしまうのです。60〜70代では、前立腺肥大症による過活動膀胱※1に伴う切迫性尿失禁※2が増えてきます。前立腺肥大症は50代で44%、60代で52%、70代で63%に見られます。
「尿もれ」というと、すぐに「介護」や「おむつ」のイメージに結びつけてしまう人が多いですが、「尿もれ」は加齢とともに誰にでも起こりうる症状で、病的な「尿失禁」とはまったく別のものです。
※1 過活動膀胱…急に我慢できないような尿意(尿意切迫感)をもよおし、我慢できずに尿がもれてしまうなどの症候群。排尿筋(膀胱の筋肉)が過敏に活動することで起こる。
※2 切迫性尿失禁…急に尿がしたくなり、我慢できずにもれてしまう症状。

命に関わるものではないけれど、生活の質は悪くなる

尿もれは命に関わる症状ではないけれど、生活の質に影響を与えます。度合いは人それぞれで、症状が重くても気にしないという人もいれば、症状が軽くても、仕事中にトイレに行きたくなってもすぐに行けずに困る人もいます。

生活に支障があって困っているのなら、くよくよ悩まずに一度、病院で診察を受けるとよいでしょう。前立腺肥大症などに伴う尿もれの場合、治療で改善できます。症状を抑える薬でコントロールすれば、生活はずいぶん改善されます。

髙橋悟先生

セルフケアや生活習慣の見直しで改善へ

排尿後尿滴下は骨盤底筋を鍛えると、尿を押し出す力がアップします。「骨盤底筋体操(ロリエ ブランドサイト)」は、男性でも効果が期待できます。お風呂で肛門に軽く指を添えてギュッと締めたり、排尿の途中で尿を止めたりすることで、骨盤底筋にうまく力が入っているかどうか確認できます(尿を止めるのは、骨盤底筋の締まりを確認するためなので、頻繁には行わないでください)。また、膀胱訓練(尿意を感じたときに、すぐにトイレに行くのではなく、尿道を締めて尿意を我慢する訓練)も行うとさらに効果的です。こうした対策は、過活動膀胱にもある程度効果があると思います。

また、生活習慣の見直しも大切。頻尿が気になる場合は、利尿作用のあるカフェインを含むコーヒーやアルコールを控えます。体は本来、重力に逆らって血液などの水分を押し上げて循環させますが、年とともに心臓や血管の機能が衰えると、下半身に水分がたまり、むくみやすくなります。足にむくみがあると、横たわったときに水分が腎臓に戻って夜間頻尿になりやすいので、ウォーキングなど適度な運動で筋肉を刺激したり、入浴で足に適度な水圧をかけることでむくみを予防すると、夜間頻尿に効果があります。

男性の尿もれケアが当たり前の習慣になるように

最近では、男性用の吸水シートなどのケア商品が登場しています。病気ではない「尿もれ」は、医学的な治療よりもセルフケアやケア商品を使用すると、安心した生活が送れるようになります。ケア商品に抵抗がある男性は多いようですが、脇汗パットと同じくらいの軽い気持ちで、まずは吸水シートを試してみてはいかがでしょうか。

くらしの現場レポート』で、男性の尿もれも女性のようにメジャーな認識になってほしいという声がありましたが、何事も市民権を得るには時間がかかるもの。僕は25年以上、尿失禁の治療に関わってきましたが、当時はまだ少数派でした。でも、今ではこうして興味を持ってもらえるようになりました。温水洗浄トイレだって発売当初は「なにこれ?」と思われていたけれど、今ではこれだけ広く認知されたのですから、吸水シートを使うことも男性の当たり前の習慣になる日が来るかもしれませんよ。

Profile

日本大学医学部附属板橋病院 泌尿器科部長/医学博士 髙橋悟(たかはしさとる)先生

医学博士/日本大学医学部附属板橋病院 泌尿器科部長
髙橋悟(たかはしさとる)先生

1985年群馬大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、国家公務員共済連合会虎の門病院、都立駒込病院、米国メイヨークリニック勤務。帰国後、東京大学医学部助教授を経て、2005年より日本大学医学部附属板橋病院にて現職。日本泌尿器科学会専門医・指導医、日本大学医学部泌尿器科学分野主任教授。

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