達人コラム

株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん
上手な家事分担は、「ほめの循環」から

2015.03.24 | 生活スタイル、働き方

【達人コラム】株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵さん

政府が「女性の活躍」を促進するなか、夫婦の家事分担についても注目が集まっています。仕事(ワーク)と生活(ライフ)のハッピーな両立を目指す「ワーク・ライフバランス」のコンサルティングをはじめ、厚生労働省のイクメンプロジェクトなど、多方面で活躍されている小室淑恵さん。二児の母でもある小室さんに、ご自身の実体験も踏まえて、夫婦で上手に家事分担するための心得についてお話をうかがいました。

「家事の奥深さ」を夫婦で共有する

日頃、洗濯や料理、掃除などをしていて皆さんも実感しているように、家事はとっても奥が深いものです。洗濯だったらシワにならない干し方やたたみ方があり、妻たちはいろいろな工夫やワザを駆使しています。この家事の「価値」や「奥深さ」を夫婦で共有することが、夫婦で上手に家事分担をするためにはとても大切だと思っています。

最近、夫の家事への妻の「ダメ出し」や「家事ハラ」が話題になり、「文句を言われるならばもうやりたくない」と懲りてしまう夫の話を耳にすることがあります。これも、我が身を振り返って考えてみると、やり方が気に入らなくてケチをつけているのではなく、「家事は価値のあること」だというところにまで夫に思いを巡らせてほしいという妻の気持ちが大きいのではないかと思うのです。妻がしているその努力をわかってもらうことで、「家事の価値」についての共通認識ができる。そこがわかれば、お互いに不満を持たずに分担できるのではないでしょうか。
我が家でも、夫が自分でシャツを洗濯したときに、普段、私がやっているようなピンとした仕上がりにならなくて、「家事は奥が深い」と言ったことがありました。このひと言で私は「ああ、わかってくれたんだ」と満足できましたし、今でもときどき思い出しては噛みしめています(笑)。

認識のギャップをコミュニケーションで埋めよう

「共通認識」という点では、夫婦でしっかりコミュニケーションをとることも大切です。ワーキングカップルでは、夫は家事を手伝うのは良いことだ、手伝わなきゃ、手伝ってあげたい、と思っています。ただ、そのベースには、家事は妻がメインでやるもので、自分はそれを手伝う立場という認識があります。そう考えるのはなぜかというと、自分は仕事をメインでやっているけれども、妻は自分ほどメイン感のない仕事をしているという思い込みが相当あるように感じます。この考えがあるうちは、家事分担もなかなかスムーズには進みません。

ギャップを埋めるコツは、毎日少しでもいいので、夫婦で会話をする時間をつくること。仕事について話すなら、「あなたと同じくらい仕事に真剣に向き合っている」という思いを、相手ときっちりと共有することが大切です。仕事や家事・育児について、お互いの思いを知ることで協力体制ができてくるものです。

小室淑恵さん

「ほめ&もったいない理論」を実践する

夫に家事を協力してもらうために、私は皆さんに「ほめ&もったいない理論」をおすすめしています。女性と男性では家事の経験値の差から、最初からきちんとできないのは仕方がないと思うのです。だから、「ダメ出し」をするのではなくて、できている部分をほめて、惜しいところ=もったいないところをさりげなく指摘するというやり方です。
今でこそ我が家では家事も育児も夫と分担できていますが、初めて夫が朝食を作ったときは2時間もかかりました!これなら私が作ったほうが早いので明日からはやっぱり自分でやろうとあきらめかけましたが、夫の味噌汁に口をつけたら出汁(だし)がきいていたんです!もう、そこをとにかくほめました。やってくれた中で、最も感心したポイントをできる限り具体的に、すごい!という驚きの表情と共に相手に伝えることをおすすめします。ほめられれば夫の家事に対するアンテナが立って関心をもつようになりますし、自分でもう一工夫しようかという気になってくれます。

そのうえで、できていない「惜しい部分」ができるようになるための情報をさりげなく提供します。例えば、料理中にシンクが散らかり放題になるようなら、「料理上手の人って、料理ができ上がると同時に、片づけも終わっているみたいよ」と、文句にならないようにささやきます。そこで初めて「そうか!」と夫側が気づくこともあるのです。
家事・育児に関しては、できるだけデイリーで関わることが重要だと思います。そのためには、例えば調味料を夫の置きたい場所に置くとか、好きな洗剤を選んでもらうなど、夫が主体的に関わりやすくなる環境を提供するのも良いでしょう。

子どもの前でたくさんほめ合おう

「ほめ&もったいない理論」を積み重ねていくことで、家事の経験値の差が少しずつ埋まっていきます。また、夫をほめ続けると、夫からもほめ言葉が返ってくるという、うれしい相乗効果もあります!
お子さんがいるご家庭では、ぜひ子どもの前でたくさん夫をほめてください。夫の家事にダメ出ししたり、文句ばかり言っていると、子どもは「パパとママは仲が悪いんじゃないか」と不安になるようですが、おだやかに両親が会話をしていれば安心して、子どもの心が安定するようです。

ほめ言葉をいっぱい聞いていると、子どももほめ上手になっていくものです。私も家事分担に至るまでの間、「ほめ&もったいない理論」を実践しながら、夫にこれ以上求めるのは無理なのかもしれないと何度かくじけそうになったことがあります。そんなときに、当時、保育園に通っていた長男が、私が普段、夫をほめているのをまねして私をほめてくれたのです。それで、ずいぶん癒されましたし、がんばれました。
また、両親がハッピーに家事や仕事を両立していれば、子どもは自分も大人になったらこんなふうに結婚生活を送りたいと思ってくれるのではないでしょうか。子どもの将来設計にも関わってくると思えば、母親はがんばれるものですよね。このように、ほめ言葉は循環します。ほめることでほめ言葉が引き出され、夫婦・家族の関係性が良い方に変わっていくことでしょう。

Profile

株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵(こむろ よしえ)さん

株式会社ワーク・ライフバランス 代表取締役社長
小室淑恵(こむろよしえ)さん

2006年(株)ワーク・ライフバランスを設立。「ワーク・ライフバランス組織診断」や「育児と仕事の調和プログラムarmo(アルモ)」、「介護と仕事の両立ナビ」、「朝メール.com」などを開発。また携帯電話用サイト「小室淑恵のWLB塾」をリリース。2009年よりワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座などを主催、多種多様な価値観が受け入れられる社会を目指して邁進中。二児の母の顔をもつ。内閣府の委員など複数の公務を兼任。著書多数。近著に新著『残業ゼロで好業績のチームに変わる 仕事を任せる新しいルール』(かんき出版)、『30歳からますます輝く女性になる方法 ‾仕事も結婚も子育ても何もあきらめなくて大丈夫!』(マイナビ出版)。2014年9月産業競争力会議民間議員就任。

Page Top