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監修/

河野産婦人科クリニック院長
河野美代子先生
プロフィール

 
03
代表的な睡眠障害

精神生理性不眠症

 不眠症で最も多く見られるのが「精神生理性不眠症」と呼ばれるケースです。これは、何らかのストレスのために身体的な緊張や興奮が起こって不眠になり、また眠れないのではないかという不安によって不眠状態が続く睡眠障害です。
 このケースでは、「眠ろう」と意識しすぎることが、眠りを妨げます。そのため、不眠のきっかけとなったストレスがなくなっても、「眠ろう」という睡眠に対する過度のこだわりが残り、不眠が続くことになるわけです。精神生理性不眠症の場合、睡眠に結びつく環境(寝室、ベッド、枕など)や習慣(就寝前の歯磨き、消灯など)が、逆に「眠れない」という連想を引き起こします。そのため、寝室では眠れないのに、居間でテレビを観たり、車の運転をしたりしていると、すぐ眠くなるというケースがよくあります。
 治療は、生活指導や精神療法が中心で、補助的に睡眠薬が用いられることもあります。

ナルコレプシー

 「ナルコレプシー」は過眠症のひとつで、日中に繰り返し居眠りが起こる病気です。ふつう10~20分ほど眠るとすっきりしますが、2~3時間後にはまた眠気が起こります。
 ナルコレプシーには、昼間の居眠りだけでなく、いくつかの特徴的な症状が見られます。まず「睡眠発作」といって、ふつうなら眠気を感じることのない試験や商談、食事中などでも、急に眠り込んでしまうことがあります。また、強い感情にともなってからだが脱力する発作や、金縛り状態、入眠時の幻覚などの症状もよく知られています。
 ナルコレプシーは遺伝的な要素が強い病気で、治療としては、夜の睡眠を十分に確保するために睡眠薬、昼間の眠気を覚ますために精神刺激薬などが用いられます。

睡眠時無呼吸症候群

 「睡眠時無呼吸症候群」とは、眠っているときに周期的に呼吸が止まって熟睡できないため、昼間に強い眠気が起きる過眠症の一種です。ほとんどの場合、本人は無呼吸を自覚しておらず、呼吸が再開するときに起きる激しいいびきを家族に指摘されて、病院を受診するというケースが多いようです。
 睡眠時無呼吸症候群は、肥満の人、首が短い人、下あごが小さい人、扁桃腺肥大の人に多く見られます。放置しておくと、高血圧症や心筋梗塞、脳梗塞などの病気を引き起こす恐れがあると見られており、見過ごせない睡眠障害のひとつです。
 予防・治療法としては、肥満の人の場合は減量することが第一。また、仰向けに寝ると気道がふさがって無呼吸になりやすいので、横向きで寝るように心がけます。
 そのほか、就寝中、人工呼吸器のポンプで気道に圧力をかけて呼吸を促進したり、下あごを前に出すようなマウスピースをはめて気道を広げたりする治療法があります。場合によっては、気道を広げる手術をしたりすることもあります。

周期性四肢運動障害

 眠っているときに、突然、脚が動いたり、筋肉がけいれんしたりするケース。そのため、夜中に何度も目が覚めてしまうのですが、本人はそれを自覚していない場合が多いようです。結果的に、よく眠れないので、朝、起きたときに気分がすっきりせず、昼間も眠気に襲われます。
 原因は不明ですが、睡眠薬や鎮静剤などの治療で症状が軽減するケースが多く見られます。

むずむず脚症候群

 その名の通り、脚がむずむずして不眠になるケースです。むずむず感は皮膚の表面ではなく、脚の内部に起こる異常感覚で、脚を動かさないではいられないほどに強烈なものです。この症状は眠りに入ろうとする段階で起こるため、寝つきが悪くなります。
 30代以降に発症することが多く、女性に多い睡眠障害のひとつです。また、妊娠、貧血、リウマチ性関節炎、尿毒症などの場合によく見られます。

概日リズム性睡眠障害

 「概日(がいじつ)リズム性睡眠障害」とは、体内時計のリズムと社会生活の時間との間にずれが生じたために起こるものです。寝つきが悪くなったり、途中で目が覚めたり、起きているべき時間に眠気に襲われたり、いろいろな障害があらわれます。
 海外旅行などで経験する時差ボケは、「時間帯域変化症候群」とも呼ばれ、概日リズム性睡眠障害のひとつです。そのほか、交代勤務制の仕事をしている人、生活の不規則な人などによく見られます。
 最近、注目されるようになった概日リズム性睡眠障害に、「睡眠相後退症候群」があります。これは、「夜更かしの朝寝坊」状態が続いて、それを正常に戻すことができない睡眠障害です。これまで、登校拒否や出社拒否と見られていたケースには、この睡眠相後退症候群によるものがかなり含まれていると考えられています。
 逆に、極端な早寝早起きの「睡眠相前進症候群」もありますが、この場合は社会生活をしていくうえであまり不都合は生じません。
 概日リズム性睡眠障害の治療としては、入眠時間を少しずつずらしていって理想の時間帯に近づける「時間療法」、体内時計のリズムを前進させるのに効果的な高照度の光を浴びる「高照度光療法」、高照度光の働きを強めるビタミンB12による「薬物療法」などが行われます。

睡眠時遊行症

 「睡眠時遊行症」は一般に「夢遊病」と呼ばれる睡眠障害で、寝ぼけて動き回るケースです。ただ歩き回るだけでなく、服を着る、ドアを開ける、トイレに行くなど、いろいろな動作を行うこともあります。ほとんどの場合、本人には動き回った記憶がありません。
 4~8歳頃に発症することが多く、20歳くらいまでには自然に治るケースがほとんどです。そのため、子どもの場合は、歩き回っても危険がないように寝室に配慮する程度で、特に治療は行いません。大人の場合は、強いストレスなどがあるときに発症することがあります。

夜驚症

 寝ている最中に突然、大きな声で叫び、強い不安状態で目覚めるのが「夜驚症(やきょうしょう)」です。呼吸が速くなり、手足をバタバタさせたりすることもあります。
 ほとんどの場合、4~12歳頃に発症して、だんだん症状が軽くなり、思春期には治ります。大人にはまれにしか見られない睡眠障害のひとつです。

寝言

 眠りながらおしゃべりをしたり、声を発したりするケース。たまに短い寝言をいう程度なら問題はないのですが、なかには長々と話すケースも見られます。
 長い寝言が長期間続く場合は、ストレスや内科的・精神科的病気が原因のこともあります。また、睡眠時遊行症、夜驚症、睡眠時無呼吸症候群などの人にもよく見られます。
 ちなみに、寝言で秘密をもらしたりするのではないかと心配する人もいるようですが、眠っているときでも心の防衛機能が働いているため、そのようなことはまずないと見られています。

悪夢

 怖い夢を見て目を覚まし、そのあと、しばらくの間、眠れなくなってしまうことがあります。ほとんどの人が経験したことがあると思いますが、これがたびたび起こるようであれば問題です。
 悪夢を頻繁に見る場合は、強いストレスが原因になっていることがあります。また、アルコールや睡眠薬などの薬剤を常用している人が急にやめると、悪夢をよく見ることがあります。

睡眠麻痺

 俗に「金縛り」と呼ばれる睡眠障害で、意識ははっきりしているのに、からだが動かず、強い恐怖感に襲われます。何かに追われる夢を見て逃げようとしていることもあれば、幻覚で人間や動物などが見えたりすることもあります。時間にすると数秒から数分程度です。
 ある調査によると、4~5割の人が睡眠麻痺の経験があるという結果が出ています。なぜ睡眠麻痺が起こるのか、はっきりした原因はわかっていませんが、不規則な生活、ストレス、過労などが続くと起こりやすいようです。そのほか、前出のナルコレプシーの場合、睡眠麻痺をともなうことがあります。

歯ぎしり

 睡眠中に上あごと下あごの歯をこすり合わせて、不快な音を発する「歯ぎしり」。本人には自覚のないのがふつうですが、なかにはあごの痛みで目を覚ます人もいます。
 原因としてはストレスとの関連が強いと見られていますが、歯並びが悪い人にもよく見られます。
 激しい歯ぎしりがずっと続く場合は、歯や歯肉を傷める恐れがあります。歯を保護するマウスピースなどもあるので、歯科医に相談してみるといいでしょう。

いびき

 「いびき」とは、息を吸ったり吐いたりするとき、空気が気道の壁を振動させる音。気道が狭くなって、空気の抵抗が大きくなるために起こります。
 いびきは、気道が狭くなりやすい肥満や扁桃腺肥大などの人に多く見られます。また、飲酒すると、気道の筋肉が弛緩して気道が狭くなるため、いびきをかきやすくなります。仰向けに寝るのも、いびきを誘発する一因です。横向きで寝る習慣を心がけるだけで、いびきが止まる場合もあります。
 いびきは一種の生理現象ともいえますが、なかには高血圧症や心筋梗塞などの怖い病気が潜んでいる場合もあります。また、断続的に起こる激しいいびきの場合は、前出の睡眠時無呼吸症候群の可能性が濃厚です。ひどいいびきが長期間続いているときは、専門医を受診しましょう。

月経や妊娠にともなう睡眠障害

 睡眠障害のなかには、月経や妊娠という女性特有の現象に関連があると見られているものがあります。ただ、こうした睡眠障害は体験的には知られていますが、まだ研究が進んでいないため、不明な点が少なくありません。

月経随伴睡眠障害

 月経や閉経にともなって、不眠症や過眠症が起こるものです。次の3つのタイプがよく見られます。
1.月経前不眠症
 月経が始まる1週間前くらいから、寝つきが悪く、途中で目が覚めることが多くなります。
2.月経前過眠症
 月経が始まる1週間前くらいから、昼間に強い眠気に襲われます。夜の睡眠は平常と同じ状態です。
3.閉経時不眠症
 更年期になると、ホルモンバランスが乱れて自律神経に混乱が生じます。そのため、睡眠にも影響が出ます。熱感や寝汗などのために、途中で目が覚めてしまうことも多いようです。
 また、卵巣機能不全によるホルモン障害がある場合にも、同じような症状が見られます。

妊娠随伴睡眠障害

 妊娠中に見られる不眠症や過眠症。一般的には、妊娠初期に過眠症が起こり、中期には安定した睡眠に戻り、後期に入ると不眠症が見られるというパターンが多いようです。

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